徴兵を逃れ、軍から脱走したミャンマー人の前途 現地ルポ ミャンマー・タイ国境での支援活動

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「脱走兵なので、見つかった場合の懲罰を覚悟していましたが、国境にたどり着くまで特に危ない目に遭ったことはなかった。軍のチェックポイントは15カ所以上だったでしょうか、数えきれないほどありましたが、身分証を見せることで問題なく通過することができました。家族旅行だと思われたのでしょう」

ウェイさんが持っていた軍の身分証(本人提供、一部加工)

あえて変装などしないで、最小限の荷物で移動したことも功を奏した。ヤンゴンを出てから国境に着くまで計画的に非常に素早く動いたので、軍側に感づかれることがなかったという。

「ここに来た当初は、新しい場所で戸惑いがありました。また一から勉強です。でも本当にありがたいことに、団体が生活の支援をしてくれるので何とかやれています」

 

今も脱走兵から多くの相談が寄せられている

驚いたことに、かつての軍の同僚がここに来ていたことも知った。

「ここの案内や世話をしてもらえて、何より私と同じ気持ちで脱走した人がここにもいたことで希望を感じました」

ウェイさんは今、新たな環境での生活に適応しながら、次の仕事を探している。そして「誤った道を進めば国は滅びる」と断言した。

私はインタビューの最後に、「残してきた部下たちに伝えたいことはあるか」と尋ねた。

「人によって気持ちは違いますから、あれこれ言うつもりはありません。国民に対する行為が正しいと思っているのなら、それはそれで仕方がないことです。ただ、正しくないと思うなら軍を辞めて逃げてきてください」

今もMother Embraceには多くの相談が寄せられている。2022年、団体の立ち上げから今まで助けた脱走兵はその家族も含めて500~600人にもなる。徴兵から逃げてきた若者は400人以上という。

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