徴兵を逃れ、軍から脱走したミャンマー人の前途 現地ルポ ミャンマー・タイ国境での支援活動

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「国境を越え、知らない人ばかりの土地に逃げるのは本当に怖かった。仕事が見つかるのか、妻や息子を食べさせていけるのか。そんな不安でいっぱいでした」

徴兵から逃れてきたので、国境を越えるときに連れ戻されるのでは、との心配もあった。幸い、友人の紹介で「Mother Embrace」というミャンマー人支援団体が出国の際の援助を申し出てくれた。

画像の左の人物が2021年のデモに参加していたナインさん(撮影:筆者、一部加工)

タイに渡ったのは2024年のクリスマス。 持病の腎臓病に伴う身体の痛みが応えたが、はじめて自身が安全な環境に置かれたことを実感したという。

「ミャンマー側にいたときは毎日戦闘の音に震えながら生活していました。爆撃の音が聞こえない。それだけで生きている実感があります」

現在、ナインさんは建設の仕事をしながら支援団体の援助を受けて生活している。

政治の垣根を越えてCDM活動者を支援する団体

ナインさんを助けた「Mother Embrace」は、ミャンマーでCDM(市民不服従運動)をしていた市民、そして脱走兵や徴兵逃れの人々を支援する団体で、タイ北部のメーソットに活動拠点を持つ。

タンミインアウン代表はミャンマーの元政治犯であり、死刑囚としてヤンゴンのインセイン刑務所に3年間収監された。その後、釈放されたが、2021年のクーデターに抵抗する人を援助したことで軍に目を付けられ、家族と共にタイへ逃れた。

団体の活動について語るタンミインアウン代表(撮影:筆者)

「CDMに関わり、ミャンマーから逃げてきた人を助ける団体はたくさんあります。しかし、徴兵から逃れてきた若者ならまだ大丈夫ですが、脱走兵など軍に関係した人の支援をする団体はあまりないのが現状です。多くの団体では、『暴力に加担した者を支援しない』とする組織のポリシーが壁になるからです。国民を傷つけた人への支援にはドネーション(寄付)への賛同が得にくいのです」

Mother Embraceの場合は国際的なドネーション(寄付)に頼らず、仲間内の資金で活動を続けていると、タンミインアウン代表は語る。脱走兵や徴兵を逃れた人々の窮状を広く伝え、支援を拡大する必要があると訴える。

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