タイ人口の10分の1がミャンマー人になった理由 2021年クーデター後に人材の国外流出が拡大
「数カ月前から、バンコクのレストランでタイ語が通じないことが、バンコクで生活する日本人の間で噂になっています」と話すのは、在タイ30年、現地で人材紹介会社などを経営する小田原靖社長です。
以前から、バンコク周辺の日本食レストランにはミャンマー人が多いと言われていましたが、タイ語を話すミャンマー人は多く、見た目もタイ人と大きな違いがないため、タイ人だと思って接していたら実はミャンマー人だった、ということがよくあったようです。
「バンコクだけでなく、リゾート地プーケットを訪れた際も、ホテルやレストランの従業員がほとんどミャンマー人で驚きました」と、福岡県バンコク事務所の西田光孝所長は振り返ります。バンコクではレストランだけでなく、雑貨店などでもミャンマー人従業員が急増しているようです。
「見た目ではわからないため、最近ではタイ語ではなく、あえて英語を使うこともあります。先日、店員にタイ語で話しかけたところ、『日本語でお願いします』と言われたこともありました」
クーデターでタイに資産を移す
2021年2月1日に発生した国軍によるクーデターの影響で、ミャンマー国内の経済は低迷しています。自国通貨の急激な下落や外貨規制など、政情不安が長期化するとの予想から、ミャンマー国内の富裕層が資産を海外に移す動きが加速しています。
タイ政府住宅銀行(GHB)傘下の不動産情報センター(REIC)によると、ミャンマーからの購入者は2023年にタイの不動産に約22億5000万バーツを費やし、中国とロシアの購入者に次ぐ第3位となりました。さらに、2024年1月から6月は国籍別ではロシアを上回り第2位となっています。
2024年2月10日、ミャンマー国軍は突如、国民の強制徴兵を可能とする「人民兵役法」を施行すると発表しました。対象は、男性が18歳から35歳までで、一部の専門技能を有する男性は45歳まで。女性は18歳から27歳までで、一部の専門技能を有する女性は35歳までとされています。
現在、女性は一時的に対象外となっていますが、この発表以降、徴兵を避けるために隣国タイへ移住するミャンマー人がさらに急増しています。
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