タイ人口の10分の1がミャンマー人になった理由 2021年クーデター後に人材の国外流出が拡大

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清水社長は、2012年にタイに進出しました。多くの店舗がタイ国内にあるにもかかわらず、従業員600人のうち、なんと550人がミャンマー人です。

当時、たまたま最初の店舗の近くにミャンマー人が多く住んでいたことからミャンマー人を採用したところ、非常に優秀だったこともあり、その後はミャンマー人従業員が主力になっていったそうです。トップはタイ人ですが、準リーダーはミャンマー人です。なぜミャンマー人を多く採用しているのでしょうか。

高いミャンマー人従業員への評価

「一言でいえば、まじめですね。とにかく仕事ぶりが良く、機転もききます。離職率は低く、片付けなども積極的です。タイ語の習得も早く、ホールスタッフはタイ語が話せるミャンマー人が担当しています。キッチンスタッフなどバックヤードはタイ語が苦手な社員が担当し、支え合う国民性なのか、異なる民族同士でも助け合っています。これまで13年ほどの中で、金銭トラブルは全店舗で2回だけです」と、ミャンマー人らを大いに称賛しています。

「タイの居酒屋王」と呼ばれるほど現地に定着・経営を続けてきた清水友彦社長(写真・西垣充)

清水社長にミャンマーのクーデター以降の従業員の変化について伺ったところ、「まずは、ほとんど辞めなくなりました。そして、コロナ禍の時期に子供が生まれた従業員も多く、子育てのためにミャンマーから親兄弟や親戚を呼び寄せるケースが増えています。身内が近くにいることで安心感が生まれ、彼らにも働いてもらうこともあります」。従業員らは安心して長期的な視点で働くことができているようです。

タイ人であってもミャンマー人であっても、給料に関していっさい差別はしていません。仕事の内容に応じて昇給する仕組みで、しっかり働けばそれに見合った給料がもらえるという、単純明快な制度です。単なるスタッフとしてではなく、マネージャーとして働いているミャンマー人も多く、それがさらに彼らのモチベーションを高めています。

「ミャンマー人の従業員は、一従業員というより、自分の会社、自分の店だと考えて働いてくれる人が多いです。上司がタイ人であっても、働けない従業員には厳しく、結果としてできる人材だけが残ります。ミャンマー人従業員が中心となって、自然に従業員を淘汰してくれるので、非常に助かっています」(清水社長)

ミャンマー人の素養だけでなく、従業員に考えさせる組織の仕組みを作り、それをマネジメントしている清水社長の卓越した経営力の賜物と言えるでしょう。

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