タイ人口の10分の1がミャンマー人になった理由 2021年クーデター後に人材の国外流出が拡大

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大嶋さんにミャンマー人の印象を伺ったところ、「とにかく優しい人が多いです。業務に限らず、困っている人や大変そうな人を見ると、すぐに助けようとしてくれます。責任感もあり、定時を過ぎてもお客様や他の従業員のために自発的に残業をしてくれることもあります」。

ただ、「そういった性格のため、人に指示を出すのが苦手な人も多い印象です。また、野心があまりなく、出世欲が強くないように感じます。競争心が少ないのか、あるいは海外という立場を踏まえてのことかもしれません。プレイヤーとしては非常に優秀ですが、マネジメントに関してはまだ伸びしろがあると感じています」と大嶋さんは評価しています。

外国人の採用は他国への展開を志すもの

そんな大嶋さんには、ミャンマーに対して特別な想いがあるようです。そのきっかけは、ミャンマーで旧日本軍の遺骨収集を行っている井本勝幸さんの講演会を聞いたことでした。

第2次世界大戦のビルマ戦線において、日本に統治されていた歴史があるにもかかわらず、戦後、ミャンマーの方々が日本人に代わって遺骨を収集し、その活動を手助けしてくれた事実に感銘を受けたそうです。

それ以来、日本人の先輩たちがお世話になったミャンマーの方々に、今度は日本人としてお返しがしたい、そして彼らを支えてくれた人々にも恩返しをしたいという思いから、クーデターでタイに避難してきたミャンマーの方々への支援を自主的に行っているそうです。

「今、会社の主力として支えてくれているミャンマー人の従業員を見て、以前は独立のためにミャンマーにお店を出したいと言っていましたが、これからは国や地域を豊かにし、活性化させるという想いでアジア全体への展開やミャンマーへの出店を一緒に目指せたらと考えています。外国人を採用することは単に人員を補うためではなく、アジア諸国への展開を志す仲間を集めることが目的です。そして1店舗、1地域、ひいては1国を任せられるような人材の育成につながればと思っています」(大嶋さん)

そんな大嶋さんが心配しているのは、日本の若者たちのことです。

「インドに進出したい日本企業から、インドで頑張ってみたいというタイ在住の日本人を探してほしいと相談を受けましたが、結局見つかりませんでした。タイは良くも悪くも安心して生活ができてしまう場所です。自分が若い頃は、タイにいる多くの若い日本人が、次の国を目指せと言われれば挑戦したいと思ったものですが、今ではチャンスがあってもリスクを取らない若者が増えてきている印象です。バンコクの日本料理飲食業界も、負けパターンに入りつつあるのではないかと不安を感じています」(大嶋さん)

西垣 充 ジェイサット(J-SAT)代表

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にしがき みつる

ミャンマー専門コンサルティング会社「ジェイサット(J-SAT)」代表。大手経営コンサルティング会社から、1996年4月に日系企業のヤンゴン事務所に転職。98年に独立し、同地にてJ-SATを設立。企業のミャンマー進出支援やミャンマーでは最難関の日本語学校を運営、ミャンマー人エンジニアや日本語が話せる技能実習生・特定技能生派遣など、一貫してヤンゴンに常駐してビジネスを行う。

ジェトロ・プラットフォームコーディネーターや大阪府ビジネスサポートデスク、福岡アジアビジネスセンターなど公的機関のアドバイザーも務めるミャンマー支援の第一人者。

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