「御上先生」で考える"教科書の記述"を巡る問題 実際に教科書を作る難しさはどこにあるのか?

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その際に、白表紙本とは別に「これはどこの誰が書いていて、こういう意図でこの本を作っていて、この章は学習指導要領のここに対応していますよ」という書類も一緒に渡します。

すると、半年くらいしてから、文科省から呼び出しがあります。その呼び出しを受けて会いに行くと、行政文書として、『検定意見書』というものが渡されます。このページがこうだからダメとか、ここはこう修正するべき、とかですね。

これを受けて、『修正表』を提出し、直っていることを証明します。修正が通るときもあれば、「もっと変えて」と言われるときもあります。修正が終わると、「あなたのところの教科書は合格だから見本を出しなさい」と言われて、見本を出すことになります。

地図帳訂正1200カ所が問題になったことも

――なるほど、修正箇所が多い・少ないというのはどのような基準によるものなのでしょうか?

基本的には、科目によりますね。例えば自分が担当した教科書は30カ所程度でした。少ないときは1桁でしたね。修正が多いのは、地理と生物だと聞きます。東京書籍が2023年、高校の地図帳に訂正が約1200カ所あったということで問題になりましたが、これは地名の表記などが間違っていたということが背景にありました。

地理は、市町村合併で地名が変わったり地図のこの線をこう変えなきゃいけない、といった確認事項が多いですから。ちなみに、生物はゲノムなど新しい研究が多いので、どこまで載せるかで議論になるようです。

御上先生 TBS
『御上先生』©︎TBS

――検定で落とされる教科書というのは、どのようなものなのでしょうか?

個人的には、学習指導要領に準拠して作り、期日通りに修正箇所を直せば通るものなので、しっかりと作れば落とされるものではないと考えています。実際、落とされた教科書を見ると、「まあ、これは落とされるよな」というポイントがあります。

ちなみに、文部科学省のホームページには、この教科書がなぜ不合格になったのか、という理由書が公表されています。その1つに、「特定の時代や題材に偏った構成となっており、全体として調和が取れていない」といった記述があります。確認すると、1つの時代にページを割きすぎていたので、確かにこの理由はもっともだな、と感じました。

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