黒門市場「インバウンド肉串」へのモヤモヤの正体 金のない日本人の「静かな排除」が拡大している

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こうした商品の値段が国際的な相場からみて高すぎるのかどうかは、難しいところだ。

特に「豊洲 千客万来」の場合、さまざまな品目において物価高が進行している現在では、こうした商品の値段が高騰するのは当然のこと。産経新聞(2024年3月10日掲載)によれば、施設の担当者は「できるだけ良い素材を使って良い商品を提供するのが店側の考えで、不当に高額な価格設定にはしていない」と述べている。

加えて、千客万来には高価な商品だけが集まっているわけではない。比較的安い値段の商品が集まった店もあれば、食べ歩きをするための屋台もあって、選択肢は幅広い。価格選択の多様性は担保されている(その点で「選択と集中」をしきれていない問題もある)。

また、東急歌舞伎町タワーが「さまざまな『好き』の想いとともに街の未来や文化、延いてはさらなる多様性を紡いでいくこと(MASH UP)を目指します」と、「多様性」を謳う施設作りを行っている。

あるいは、黒門市場などでも、いわゆる「インバウンド向け」に高額の商品がある店はいくつかの店舗に限られており、地元民向けの店も多く存在している。つまり、事業者側は、必ずしもインバウンドだけに向けた施設ではないとしているのだ。

とはいえ、ニセコ報道の影響もあって、「豊洲 千客万来」を一躍有名にしたのは、この「インバウン丼」という言葉だったし、東急歌舞伎町タワーの評判を見ても、「外国人しか相手にしていない」なんて言葉が並んでいる。

また、黒門市場の評判も散々だ。施設の実態を離れて、「ニセコ」的な受け止め方がされているわけだ。

思惑とは裏腹にこうした評判が立ってしまったのは、かつてより、外国人観光客向けの「囲い込み」が露骨に感じられるようになってきたからだろう。

施設側は認めたくないかもしれないが、「選択と集中」、そしてそれによる「静かな排除」を、日本人がうっすらと感じていることの表れなのである。

「渋谷」もニセコ化している

国内観光地が、多かれ少なかれ「ニセコ化」していることを見てきた。こうした変貌を街レベルで遂げつつあるのが渋谷である。スクランブル交差点の風景はあまりにも有名で、訪日観光客からも絶大な人気を誇る街である。

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