SBI新生銀行、早すぎる「再上場」に渦巻く思惑 金利あるうちに再上場?問われる成長戦略

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預金調達利回りは2024年4~9月期に、前年同期比で0.12ポイント上昇した一方、貸出金利回りは同比0.04ポイントしか伸びていない。預金調達費用の上昇を転嫁できなければ、利ザヤは縮む一方だ。

もう1つの懸念は、グループ内のノンバンクの存在感だ。銀行傘下のアプラスおよび新生フィナンシャルは、2023年度に前者が76億円、後者が50億円の純利益を計上している。

稼ぎ頭であるものの、ノンバンクは銀行と比べて金利感応度が鈍い。キャッシングやカードローンは利息制限法で上限金利が定められているため、金利上昇分を転嫁することが難しい。他方で運用原資は主に市場から調達するため、金利上昇局面では預金以上に調達費用が膨らむ。せっかくの金利上昇が向かい風となるリスクがくすぶる。

問われる成長戦略

再上場後、銀行株の中で埋没しないためには、SBIグループとの連携を深めることが欠かせない。同じ旧長期信用銀行でいわば兄弟分であるあおぞら銀行は、M&Aや金融商品販売などで大和証券グループ本社と提携した。SBI新生銀行も同様に、SBI証券が抱える顧客への営業やSBIグループが出資する系列地銀との協調融資を掲げる。

株式上場を果たせば資本政策の自由度が増す一方、余剰資本の活用方針も問われる。SBI新生銀行は昨年1月に不動産融資を手がけるダイヤモンドアセットファイナンスを買収したほか、10月にはリース大手のNECキャピタルソリューションに33.3%を出資し持ち分法適用会社とした。こうした成長投資を続けるか、株主還元を強化するかのバランスも課題となる。

SBI新生銀行は2025年4月からの新たな中期経営計画を策定する予定だ。上場への意欲を示したことで、株式市場からの注目も一段と集まる。公的資金のくびきから解き放たれるとはいえ、短期間で株式市場に舞い戻る大義を示せるかがカギを握る。

一井 純 東洋経済 記者

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いちい じゅん / Jun Ichii

建設、不動産業の取材を経て現在は金融業界担当。銀行、信託、ファンド、金融行政などを取材。

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