ラーメンというのは、丼にタレを入れ、スープを注いで、麺と具を入れて仕上げるのが基本的な作り方である。
しかし、美味しいスープができれば「タレ」はいらないのではという境地に辿り着いたのである。松村さんはフレンチの技法のすべてを使ったスープ作りにチャレンジし、「八五」の味を完成させた。
厳選した鶏と鴨をメインに、昆布、椎茸、イタヤ貝、ドライトマトなど様々な食材の味を重ね、中華の上湯スープの技法を応用して、生ハムのダシで味を調えている。
ダシ感のみでぐいぐい引っ張るスープの複合的な旨味は、筆舌に尽くしがたいものがある。
なんと「八五」は2018年のオープン時にこのラーメンを850円で提供していた。私はこの味でこの価格なのかと目を丸くした記憶がある。
確実に全国的に評価されることは間違いのない一杯だと思ったし、今まで全く食べたことのないイノベーティブな一杯だった。さらに、立地もお店のしつらえも完璧だったのに、である。
「味はもちろん自信がありました。
ですが、6席しかない店で、多少価格を上げたとしても儲からないことはわかっていましたので、店をオープンして認知してもらえるまではこの価格で辛抱しようと850円でオープンしました。
その後、店舗展開や商品展開などに繋がればいいなという希望を残しつつ」(松村さん)
オープンの翌年には『ミシュランガイド東京』のビブグルマンに選ばれる。しかし、オープンから1年半は価格はそのままでお店を続けた。その後、コロナが直撃し、勢いは落ちていった。
記帳制を導入も、様々な問題が生じる
コロナが終息してきた頃に初めて価格改定をし、お客さんが戻ってきて行列が伸びてきた頃、「記帳制」をスタートした。
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