「脱サラしたプロ棋士」1年半で見た"棋界のリアル" 小山怜央四段が直面した、厳しさと凄みの日々

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終局後には「感想戦」が行われる。敗者が敗因を探るのに勝者が付き合う感じだが、体調がつらければ辞退や簡単に済ませることも可能だ。だが、泉は小山が納得するまで感想戦に付き合ってくれた。34歳も年上の棋士は、まさに「いぶし銀」だった。

「ベテランの先生にそうした強さがあるのはもちろん知っていたのですけど、これほど体感したのは初めてでした。自分がシステムエンジニアとして働いていたとき、定年間近の先輩が新しいものを取り入れていく姿勢に、刺激を受けたことがあります。ただ将棋は勝負の世界なので、泉先生の凄みはまた違ったものでした」

小山怜央
(筆者撮影)

「地方出身の棋士」が恵まれている理由

小山はプロになって「まだ東京の街中で声をかけられたことはない」という。だが、地元の岩手ではすでに有名人だ。

地方出身の棋士が恵まれているのは、地元に応援してくれる人たちがたくさんいて、後援会などが作られることである。昇段すると祝賀会も開かれ、地元の市長や名士らも参加する。地方紙に載り、地元のPRも担う。

棋士に東京や大阪など大都市の出身者が多いのは、小さい頃から指導者や強い相手と指せる環境に恵まれていることによる。イベントや将棋教室などファンと接する機会も多いが、1人の棋士を応援するための集まりはあまりない。

プロになったときには脱サラから棋士になったことが注目され、自らも「エリートとは違った世界を見せたい」と語った。

将棋界では若いほど期待値が高く、10代でプロになった者が注目される。小山は「奨励会」を経ずに、会社員という遠回りを経験してきた。同時期にデビューした棋士には、小山より一回り年下の者もいる。

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