「脱サラしたプロ棋士」1年半で見た"棋界のリアル" 小山怜央四段が直面した、厳しさと凄みの日々

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大学時代に学生名人とアマ名人になった小山でも、この規定をクリアするまでに足掛け4年を要した。途中で会社を辞めて将棋の勉強に専念するも、そこから受験資格を得るまで2年。その間は貯金と失業保険、将棋講師のアルバイトで食い繋いだ。

そして3人目の編入試験合格者となったのは、2023年2月、29歳のときだった。

小山怜央
(筆者撮影)

プロ棋士の「リアルな日常」

サラリーマンから棋士への夢を実現させた小山だが、将棋のプロの生活とはどのようなものか?

彼らはプロ公式戦で将棋を指し、対局料と賞金で生活している。現在、棋戦は公式戦と準公式戦だけで17個あり、新聞社や不動産会社、証券会社など多くの大企業がスポンサーにつく。その契約金が将棋連盟を通して、対局ごとに棋士に振り分けられるわけだ。

対局料は勝者にも敗者にも支払われ、その金額は棋戦や棋士のランキングによって異なる。タイトルホルダーになれば対局料だけでもかなり高額だ。

ちなみに藤井聡太七冠の2023年度の対局料と賞金額の合計は、1億8634万円だった。この他にイベントや番組出演料、著作印税なども入る。この金額はトップ棋士の場合だが、新人棋士の収入はどうなのか?

「現状は会社員時代に比べて、劇的に増えたということはない程度です」

公式戦はトーナメント方式が多いため、勝てば対局が増え、負けが続くと間隔が空いてしまう。週に数局のときもあれば、2カ月近くないこともあった。

「収入は多い月と少ない月では差が大きいですね(笑)。感覚としては月収というより、年収で考える感じです」

新人棋士にもイベントへの出演や将棋教室の講師などの仕事が入ってくる。依頼は日本将棋連盟を通しての場合が多いが、棋士は独立事業主で、仕事を受けるかどうかは個人の判断に任される。プロは将棋の普及を大切にしており、公式戦の日程と調整がつく限りは積極的に受けているようだ。

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