「脱サラしたプロ棋士」1年半で見た"棋界のリアル" 小山怜央四段が直面した、厳しさと凄みの日々

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それでもまだ月に20日くらいはスケジュールが空いているが、その時間はどうしているのだろうか。

「私は月に研究会を10日くらい入れています」

研究会とは、棋士が数人で行う棋力向上のための将棋の稽古だ。メンバーの違う研究会をいくつも掛け持ちして、各棋士が技術を磨いていく。

また1対1でやる場合を「VS」と呼ぶ。多い棋士では研究会やVSを月に15日から20日も行う。AIが登場して以降、将棋の定跡の進歩は目覚ましく、少しでも研究を怠れば取り残されてしまうようになった。ボクサーが月に1試合しかなくても、練習を欠かさないのと同じだろう。

毎月顔を合わせる研究会仲間とは、個人的な付き合いがあるとは限らない。メンバーとなるのは互いの実力を認め合っているからだが、ライバルであることにも変わりはない。

「親しい棋士でも対局が決まれば、しばらく会わなくなります。どんな対局でも、負けた後はその場にいたくないほど悔しい。なんでもいいからその痛みを誤魔化したくなる。でも一晩寝れば、次の対局に向けて気持ちは切り替わります。負けを引きずらないことが大切ですから」

小山怜央
(筆者撮影)

伝統を重んじるが、パワハラがない棋界

将棋界は伝統を重んじる世界だ。一般には、上下関係を重んじる場所は窮屈だったり、人間関係でのストレスがあったりしそうなものである。

「将棋を始めたときから、礼儀だけは必須だと教えてこられました。ただ将棋界はかなり自由な社会で、もし少し苦手な人がいたら関わらなければいいだけですし、人間関係は気持ちの上でだいぶ楽ですね」

小山にとっても過ごしやすいという将棋界では、パワハラも見たことがないと話す。

「そういう考え方の人はあまりいないです。棋士は子どものときからプロを目指してきて、これからもずっと将棋を続けていくという、純粋な気持ちを持っている人の集まり。その意味では、居心地の良い場所だと感じています」

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