トランプ大統領が告げた「黄金時代」の自信と過信 マスク氏らITトップとの蜜月に支持層から警戒感も

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トランプ氏はインフレ対策や移民対策などを期待され当選した。自信に満ちたトランプ氏は自らに忠実なイエスマン・イエスウーマンで側近を固め、2.0は歯止めがかからない見通しだ。

仮に政権が政敵の追及などに注力したり、1.0のように非人道的とも捉えられかねない厳格過ぎる移民政策を実施したりすれば、国民の支持低下を招くかもしれない。トランプ氏は就任演説で「常識」を取り戻すことを約束したが、過信はトランプ氏にとってのリスクとなるであろう。

極寒の中、行列する支持者とVIP専用口

就任式では、閣僚候補よりも前方の良い座席にハイテクCEOが着席するといった異例の光景が目立った。テスラCEOのイーロン・マスク氏やアマゾン創業者ジェフ・ベゾス氏、グーグルCEOのサンダー・ピチャイ氏、アップルCEOのティム・クック氏といった面々が、トランプ政権で「ブロリガルヒ(トランプ氏に近い男友達のオリガルヒ)」として影響力を持つことを示唆した。

就任式が開催されたワシントンには、白人に加え、黒人、アジア系、ヒスパニック系も含む多人種のトランプ支持者が全国から集結した。熱狂的な支持者は何時間もトランプ氏の演説を聞くために極寒の中、行列をなしていた。ハイテクCEOなど大富豪が就任式に多額の貢献をし、VIP専用口から入場したのとは大きく異なる扱いだ。

MAGAの支持基盤に影響力があるスティーブ・バノン元首席戦略官はブロリガルヒに警戒感を示している。いずれトランプ氏の支持基盤はハイテクCEOへの批判を強め、トランプ氏は距離を置かざるをえず、蜜月関係は長続きしないとの見方もある。

議会は上下両院ともに僅差で共和党が多数派であり、トランプ氏の望む法案可決は容易ではない。2026年中間選挙では、大統領の政党は苦戦することが予想され、下院で共和党は多数派を失う可能性が高い。

したがって、トランプ大統領にとっては約2年弱の勝負となる。

時間とともに共和党の熱意は冷め、現状は様子見のリベラル派をはじめ抵抗勢力も強まること必至だ。再任理由である経済対策など国民の期待にトランプ氏が応えることができるか、それは時間との戦いとなるであろう。

渡辺 亮司 米州住友商事会社ワシントン事務所 調査部長

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わたなべ りょうじ / Ryoji Watanabe

慶応義塾大学(総合政策学部)卒業。ハーバード大学ケネディ行政大学院(行政学修士)修了。同大学院卒業時にLucius N. Littauerフェロー賞受賞。松下電器産業(現パナソニック)CIS中近東アフリカ本部、日本貿易振興機構(JETRO)海外調査部、政治リスク調査会社ユーラシア・グループを経て、2013年より米州住友商事会社。2020年より同社ワシントン事務所調査部長。研究・専門分野はアメリカおよび中南米諸国の政治経済情勢、通商政策など。産業動向も調査。著書に『米国通商政策リスクと対米投資・貿易』(共著、文眞堂)。

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