まだ就任1カ月かと思うほど矢継ぎ早に政策を繰り出すトランプ大統領。法治国家の根底を損なえばアメリカ経済は揺らぐ。
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先日会ったウォール街の米大手金融機関アナリストが、投資家の間でアメリカの政治的安定性への懸念がにわかに高まっていると語っていた。特に投資家が警戒し始めているのが、これまで投資先として世界で卓越した信頼を誇っていた法治国家が崩れていくテールリスクだ。
第2次トランプ政権(トランプ2.0)発足から2月20日で1カ月が経つ。「大統領令の氾濫」とも呼ばれるが、トランプ大統領は大統領令を次々に発行し、スピーディーに政策を実行している。
だが、同時に大統領令に対する提訴も見られ、ニューヨーク大学法科大学院運営のネット掲示板「ジャストセキュリティ」の分析によると訴訟件数は2月中旬時点で約75件にも上る。
氾濫する大統領令の中には「憲法違反」も
特に大統領権限を越えると批判を集めたのは、憲法修正第14条で明記されている「出生地主義」(アメリカで生まれた子に自動的に国籍を付与)の修正、連邦議会の立法措置を通じ設立した米国際開発局(USAID)解体の動き、そして連邦議会の予算権限を蔑ろにした連邦政府の補助金や融資プログラムの一時停止措置などだ。
政権発足以降、トランプ氏による政策について、ワシントンの識者やリベラル寄りの米メディアは「憲法危機」と頻繁に語っている。「憲法危機」とは三権分立で「抑制と均衡」が機能不全となることだ。つまり、司法府、立法府、大統領府を頂点とする行政府のいずれかの機関が憲法上、自らに与えられた権限を越えた行為を続け、他の機関が阻止できない、あるいは阻止しないことを指す。
現状、アメリカはその段階にはなく「憲法危機」には陥っていないが、民主党が懸念しているのが、今後、大統領の職権乱用を立法府や司法府が止めないことだ。
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