“甘い”キムチで大躍進、革命児ピックルスの野望

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そんな業界に新風を吹き込んだピックルスは、「きゅうりのキューちゃん」で知られる東海漬物の子会社として1977年に創業した新興勢力だ。荻野芳朗社長をはじめ、経営陣は東海漬物の出身者が多い。今でも東海漬物が同社株式の49・9%を保有しているが、ピックルスの取引に占める東海漬物の比率は2%とビジネスではほぼ独立している。01年には漬物会社として初めて株式上場を果たした(現在も唯一)。

ピックルスにとって東海漬物以上に関係が深いのは、セブン&アイ・ホールディングス(以下、セブン)。もともと自社ブランド商品を持たず、セブン向けを中心に浅漬け、キムチなどのPB(プライベートブランド)商品を受託製造してきた。一時は売上高の60%以上がセブン向けPBだったため、上場を機にNB商品開発に本腰を入れ始めた。

漬物業界は地域ごとに売れ筋が違っており、全国規模で売れる商品は少ない。「きゅうりのキューちゃん」のようなロングセラー商品があるにはあるが、短期間で新商品が爆発的なヒットとなる可能性は極めて低いというのが業界の常識だった。ピックルスはこの常識に挑んだ。

07年に、それまで社内になかった企画開発部門「開発室企画開発課」を設立。メンバーには、漬物を知り尽くしたベテランではなく、漬物に“疎い”女性の若手社員を抜擢。荻野社長の命令は「品目はキムチ。それ以外は自由」。地域ごとに好みが異なる浅漬けより、日本人の好みが確立されていないキムチのほうがヒットを生みやすいと考えたからだ。

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