実をいうと、獣医病理医として、ヘビの病理解剖の際には独特の緊張を強いられます。体がくねくねと動いてハンドリングが難しいことに加え、やはり鋭い歯が最大のネックとなります。
以前、動物園で6メートルのオオアナコンダの出張病理解剖を行ったとき、誤ってその鋭い歯で指を刺してしまったことがありました。
ヘビの歯は非常に鋭いので、刺さっても意外と痛みを感じません。そのときもちょっと歯に触れただけでしたので、当初は手袋が傷ついただけで指は無事と思っていました。
しかし、解剖後に手袋を外してみると、指から出血していることに気がついたのです。
幸い毒を持たない種であったものの、明らかに何らかの感染症で死亡していたので、傷口から病原体が体に入ってきてはいないかと、その後しばらくハラハラしながら過ごしたものです。
ヘビの病気解明にさらなる進歩を
今年も僕は、緊張を抱えながら何匹ものヘビを解剖することになるでしょう。「進歩の年」とされる巳年。1匹のヘビの死も無駄にすることなく、ヘビたちの命を通して、ヘビの病理学をさらに進歩させる――それが今年の僕の抱負です。
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なかむらしんいち / Shinichi Nakamura
1982年生まれ。大阪府出身。岡山理科大学獣医学部獣医学科講師。獣医師、博士(獣医学)、獣医病理学専門家、毒性病理学専門家。麻布大学獣医学部卒業、同大学院博士課程修了。京都市役所、株式会社栄養・病理学研究所を経て、2022年4月より現職。イカやヒトデからアフリカゾウまで、依頼があればどんな動物でも病理解剖、病理診断している。著書に『獣医病理学者が語る 動物のからだと病気』(緑書房,2022)。
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おおたに ともみち / Tomomichi Ohtani
1982年生まれ。兵庫県出身。東京大学農学部卒業。同大学院農学生命科学研究科水圏生物科学専攻修士課程修了。同博士課程中退。出版社勤務を経て2015年2月にスタジオ大四畳半を設立し、現在に至る。農学・生命科学・理科教育・食などの分野の難解な事柄をわかりやすく伝えるサイエンスライターとして活動。主に書籍の企画・執筆・編集を行っている。著書に『増補版寄生蟲図鑑 ふしぎな世界の住人たち』(講談社)、『眠れなくなるほどキモい生き物』(集英社インターナショナル)、『ウシのげっぷを退治しろ』(旬報社)など。
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