イヌやネコのように吠えたり鳴いたりしないこと、臭いが発生しにくいこと、哺乳類と比べて代謝がゆるやかなので餌を頻繁に与えなくてもよいこと(一般的な餌である冷凍マウスにどうにも抵抗がある……という人はいらっしゃるかもしれませんが)などから、ペットとしてのヘビには漠然と「飼いやすい」というイメージがあるかもしれません。
しかし、ヘビは長生きさせるために、それなりの注意が必要な動物です。
誤った飼い方で死んでしまうケースもよく見られ、近年の飼育数の増加に伴って、獣医病理医である僕のところに持ち込まれるヘビの遺体も目に見えて増えてきています。
この子が死んだ理由を知りたい
ペットとしてメジャーなヘビには、コーンスネークやボールパイソンなどがいますが、それらに並んで人気なのが、シシバナヘビです。シシ(獅子)のような「反り返った鼻」が特徴とされますが、この部位は実際には鼻ではなく、吻端板(ふんたんばん)という名称の鱗です。
全長は約80センチと小型で、動きがゆっくりとしており、初心者でも飼育がしやすい、体色や模様のバリエーションが豊富なことから、特に女性に人気の高い種です。
ある日、20代の女性の飼い主さんから、このシシバナヘビの一種、セイブシシバナヘビの病理解剖を依頼されました。
この飼い主さんは、ヘビの飼育について非常によく勉強されていたのでしょうね。「私は、シシバナヘビ以外にも複数の爬虫類を飼育しています。この子はこれまで何の問題もなく飼育してきたのですが、突然死してしまいました。アメーバ症で亡くなってしまったのかもしれません。もしそうなら、自分の飼育管理が至らず、ヘビの飼育ケージにアメーバを持ち込んでしまったのでは……」と、ひどく心配されていました。