セブン&アイ、業績悪化で単独路線にともる赤信号 買収提案の最終判断は5月の株主総会までと表明

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しかし、事情に詳しい複数の関係者によれば「デピント氏は、クシュタールの買収をきっかけにアメリカ事業を分離させ、アメリカで上場を果たそうと考えていてもおかしくない」というのだ。

じつはこれは創業家サイドにとっても渡りに船ではある。ある金融関係者は言う。「創業家によるMBOをめぐっては、7兆円にも上るといわれる資金調達面で話し合いが難航しているが、アメリカ事業を売却できれば買収資金を調達することができる一方で、買収総額に関しては大きく減らすことができる。ヨークHDの売却に関してもその一環だ」

そのため、アメリカ事業を切り離してIPOするという構想が浮上しているわけだ。

国内事業は創業家が取り戻す?

「セブン&アイがそごう・西武を売却した際、買収した投資ファンドのフォートレスがすぐさまヨドバシHDにそごう・西武を売却して金融機関へ買収資金を返済した。クシュタールが欲しいのはアメリカ事業だけ。そのため、クシュタールにセブン&アイを売却してアメリカ事業だけを渡して上場、残った国内事業を創業家が取り戻すというウルトラCもあるのではないか」と見る金融関係者もいる。

ただ、セブン&アイにとってアメリカ事業は収益の大半を稼ぐ屋台骨であり、それを失ってしまえば「オーバーストア状態の国内だけとなってしまい、いくらコンビニ専業になったとしても成長は厳しいと言わざるをえない」(セブン&アイ幹部)。となればスタンドアローン路線には黄信号がともり、創業家によるMBO戦略にも「成長できなければMBOの際に借りた巨額の借金だけが残って返せなくなる可能性」(金融関係者)が出てやはり黄信号がともる。

はからずも著書のタイトルに付けた通り、セブン&アイHDは解体への道を邁進している。丸山CFOは、5月下旬に開催予定の株主総会をメドに一定の判断をするとの意向を示しているが、どの案に決まったとしてもセブン&アイの行く末は視界不良といえそうだ。

田島 靖久 東洋経済 記者

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たじま やすひさ / Yasuhisa Tajima

週刊東洋経済副編集長。大学卒業後、放送局に入社。記者として事件取材を担当後、出版社に入社。経済誌で流通、商社、銀行、不動産などを担当する傍ら特集制作に携わる。2020年11月に東洋経済新報社に入社、週刊東洋経済副編集長、報道部長を経て23年4月から現職。『セブン&アイ 解体へのカウントダウン』が小社より24年12月発売予定。

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