セブン&アイ、業績悪化で単独路線にともる赤信号 買収提案の最終判断は5月の株主総会までと表明
セブン&アイにとって、これだけの業績悪化は確かに厳しい。しかしなぜ「最悪のタイミング」と幹部は語るのか。
それは、著書でも詳細に触れているが、セブン&アイは2024年8月にカナダのコンビニ大手アリマンタシォン・クシュタールから買収提案を受けているさなかだったからだ。現在、セブン&アイをめぐっては、(1)クシュタールからの買収提案のほか、(2)創業家主導の買収による株式非公開化(MBO)、そして(3)単独による現経営体制の維持という3つの案が並行して走っており、セブン&アイが設置した特別委員会がどの案が妥当か議論している。
このうちクシュタールの提案については、アメリカにおける独占禁止法への対応が明らかになっておらず、資金調達面も含めて疑問符が付いている。一方、実質的な買収防衛策として打ち出した創業家によるMBOに関しても、7兆円以上ともいわれる買収資金の調達をめぐって調整が難航しており、セブン&アイの丸山好道最高財務責任者(CFO)も「特別委員会が議論しているが、買収実現のハードルはどちらにもありソリューション(解決策)はまだきていない」と語る。
スタンドアローンで行きたいが…
しかし丸山氏の言葉の裏には、「セブン&アイ単独路線が最もいいとの思いが透けて見える」と別のセブン&アイ幹部は語る。この幹部は、「これまでの主張を覆してまでイトーヨーカ堂の売却に踏み込んだのは、クシュタールからの買収防衛を図ってスタンドアローンで生きていくため」と言う。
事実セブン&アイは、それまでアクティビスト(物言う株主)から突き付けられた「コンビニ以外の事業を切り離してコンビニ専業になるべき」との要求に対して、「セブン‐イレブンの商品開発のためにイトーヨーカ堂が必要」と主張して拒んできた。ところがクシュタールの買収提案を受けた途端にこうした主張を翻し、イトーヨーカ堂を始めとする非中核会社31社で構成する中間持ち株会社ヨークホールディングス(HD)を設立、株式売却に向けて入札を行っている。
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