停戦に向けてウクライナに残された3つのシナリオ トランプ新大統領は早期停戦をまとめられるか

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第3のモデルこそ現実的なモデルであるが、これとてウクライナ政権には承服しがたいであろう。

残された西ウクライナの西の地域、すなわち自由ウクライナはポーランド、ハンガリー、ルーマニア、スロバキアに返還され、ウクライナのNATO入りはほぼ実現するものの、それはもはやウクライナとしてのウクライナではなくなるからである。

そして新ウクライナは、国家として存続するものの、ロシアと密接な旧ソ連の共和国と同じような位置づけになり、NATOやEUとの関係が完全に断たれ、BRICS経済圏に包含されてしまう。

これはあくまでも1つのロシア人の案であり、プーチンの案ではない。しかし、現在の戦況から見て、ロシアは占領した地域のみならずウクライナ全体をロシアの緩衝地帯にしたいという意図を持っていることは確かだ。

ウクライナの非武装中立化?

NATOやEUに参加しないという条件がそれであり、そこは譲れない部分といえる。

戦況を有利に展開するロシアは、占領した地域のみならずウクライナ全土を中立の非武装地帯として考えることは間違いないだろう。そうすると停戦は簡単にまとまりそうにはない。

まとまらないとなれば戦争は終わることなく続き、最終的には第1の併合モデルか第2のアナーキーなモデルになるのかもしれない。今後の状況は、どこまでウクライナが譲歩できるかという問題と、西欧勢力が武器の支援を行わないという条件にかかっているといえる。

かくも複雑な戦後の処理をどうするのか。トランプのお手並み拝見といきたい。

的場 昭弘 神奈川大学 名誉教授

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まとば・あきひろ / Akihiro Matoba

1952年宮崎県生まれ。慶應義塾大学大学院経済学研究科博士課程修了、経済学博士。日本を代表するマルクス研究者。著書に『超訳「資本論」』全3巻(祥伝社新書)、『一週間de資本論』(NHK出版)、『マルクスだったらこう考える』『ネオ共産主義論』(以上光文社新書)、『未完のマルクス』(平凡社)、『マルクスに誘われて』『未来のプルードン』(以上亜紀書房)、『資本主義全史』(SB新書)。訳書にカール・マルクス『新訳 共産党宣言』(作品社)、ジャック・アタリ『世界精神マルクス』(藤原書店)、『希望と絶望の世界史』、『「19世紀」でわかる世界史講義』『資本主義がわかる「20世紀」世界史』など多数。

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