JAL「パイロット飲酒問題」、現場の警告は届かず 客室乗務員や整備士は不安の声を上げていた

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事業改善命令が続いた2019年、当時は社長だった赤坂氏は「(飲酒問題の背景には)不都合なものに目をそらす事なかれ主義の横行があった」と自ら語っていた。自ら安全統括管理者となり、社内の意識改革に臨んだはずだったが、5年以上が経った今も、状況は何一つ変わっていない。

今回の取材でわかったことがもう一つある。

メルボルン空港での一連のトラブルについて、運航管理の最高幹部である下口拓也オペレーション本部長、乗員管理の最高幹部である南運航本部長が出発前に情報を得ていたにもかかわらず、欠航の判断を下せなかったことだ。

南運航本部長は「(2人は)本来乗務させられない状況だった」と述べている。

JALのパイロット飲酒問題
2018年には乗務直前の副操縦士から過剰な血中アルコール濃度が検出され、ロンドンで逮捕された。事件当時に社長だった赤坂祐二・現会長(右)は記者会見で「私自身、今回の事実に大変ショックを受けた」と語っていた(編集部撮影)

事態の深刻さは伝わっていたのか

JALの説明では、客室乗務員らの進言について報告を受けた下口オペレーション本部長は事態の深刻さを把握できず、「関係者でしっかり話しあって対応するように」と指示しただけだった。

同様に進言の情報を得ていた南運航本部長は、副機長の再検査の結果がアルコールゼロの状態であることを再確認したうえで、「運航乗務員を乗務に就かせて問題ないと判断」(広報部)し、下口本部長にもその旨を伝えた。

2人に詳細な情報が伝わらなかった可能性はあるものの、そのことを含めて結果責任は免れないだろう。

1月7日、鳥取三津子社長は都内のホテルで開かれた経済団体の新年交礼会に出席し、「今年は上昇気流に乗る」などと語っていた。

飲酒問題については、「組織として管理が不十分だった。経営のリスク管理の問題だと思っている。これ以上お客さんに不安を抱かせることのないようしっかりやっていきたい」と決意を述べるだけで、自らの責任については触れなかった。

乗客の命を預かる企業のトップとして鳥取氏はJALを立て直していくことができるのか。まずは1月24日が提出期限の国交省に報告する再発防止策の中身が問われる。

森 創一郎 東洋経済 記者

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もり そういちろう / Soichiro Mori

1972年東京生まれ。学習院大学大学院人文科学研究科修了。出版社、雑誌社、フリー記者を経て2006年から北海道放送記者。2020年7月から東洋経済記者。

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星出 遼平 東洋経済 記者

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ほしで・りょうへい / Ryohei Hoshide

ホテル・航空・旅行代理店など観光業界の記者。日用品・化粧品・ドラッグストア・薬局の取材を経て、現担当に。最近の趣味はマラソンと都内ホテルのレストランを巡ること。

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