地理で考える「日本の都市」に城壁が存在しない謎 世界のほかの都市では作られているものの…
言うまでもなく、城壁は戦乱が発生したときに、外敵から自分たちの身を守るために作られているものです。城壁が高ければ、侵入者からの攻撃を防ぐことができます。
でもこれは、周りが平原で囲まれている地域の場合が多いです。平原であれば、四方から攻められる可能性があります。そこで四方を守るために城壁が必要になります。
一方で日本は多くの山や川に囲まれた地形になっています。例えば城の後ろに山があることで背後を守ったり、海や川があることで外敵が攻めるのは困難になります。
例えば鎌倉は、3方向が山に囲まれていて、残りの1方向は海だったため、攻めにくい立地をしています。だからこそ鎌倉に幕府が置かれたと言われています。このように、人工的な城壁がなくても、自然の要塞で防御することが可能なのです。ですから日本では、壁の代わりに自然の力を活用していたと考えられます。
もう1つ考えられることとして、城壁が地震で壊れてしまう説です。今も昔も変わらず、日本は地震が多く、高い建物を作っても壊れてしまう危険性があります。せっかく高い壁を作っても、地震で壊れてしまったら危ないですし、意味がないですよね。
海外では地震が少ないのであまり考慮しなくていいわけですが、日本では死活問題です。だからこそ城壁が少なかったのではないかと考えられます。
城壁よりも堀が作られることが多い
さて、都市だけでなく城にも注目してみましょう。日本の城の特徴として、城壁よりも堀が作られる場合が多いことが挙げられます。
堀は、地面を掘って作られた水路のことであり、そこに水を流すことができれば外敵の侵入を防ぐことができます。
先ほど「土塁」という堤防の話もしましたが、これは基本的に、この堀を掘ったときに出てきた土を利用し、堤防状に作られたものです。つまり土塁も、ほとんどの場合、堀ありきで作られているわけですね。
堀は日本の風土と合っているものでした。壁とは異なり、地震で倒れるなどの心配もほとんどありません。また、日本は雨が多く、堀の中に水を入れることが容易だったため、城壁よりも堀のほうを防御策として建設する場合が多かったと言われています。
日本人の感覚からすると意外に感じる人も多いと思いますが、実は世界的に見ると堀がある城は珍しいです。それは、ほかの地域では日本ほど水の確保が容易ではなかったからと考えられます。
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