赤プリ再開発名称に「紀尾井町」が加わる事情 ロゴマークから連想される"あの家紋"とは

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総工費は約980億円。「不動産事業の柱となる開発プロジェクト」と後藤社長が位置づけるように、西武HDにとって東京ガーデンテラス紀尾井町の成否は会社の今後を左右する。

同社の中期経営計画では、グループ全体の連結売上高を2014年度実績の4881億円から2017年度には5300億円に、EBITDA(償却前営業利益)を895億円から約1055億円に引き上げる見通しで、その成長ドライバーを担うのが不動産事業だ。そうした不動産事業の最初の目玉となる案件を無事に軌道に乗せることが中期計画達成には不可欠だ。

今後の大型案件とは「ゆかり」が共通?

「西武グループの総力を結集して推進するプロジェクト」と後藤高志社長。横に新しいロゴマーク。

西武HDは東京都23区内に46.5万平方メートルの土地を有しており、その広大な土地をどう活用するかが以前から注目されている。品川・高輪地区(約13万平方メートル)や東京・芝公園(約8万平方メートル)の大型再開発案件も控えており、今後のためにも西武グループが、まずは紀尾井町で大規模開発の成功実績を作れるかが試されている。

後藤社長は、「東京ガーデンテラス紀尾井町は西武グループの総力を結集して推進するプロジェクト。こうしたノウハウは大変な財産であり、今後、まだ計画はないが、こうした複合再開発のプロジェクトが具体化する時にはそのノウハウ、エネルギーを注力していきたい」と強調する。

次に控える大型再開発案件と、東京ガーデンテラス紀尾井町には、いくつか立地的な共通項がある。ひとつは近隣・敷地内に多くの緑地・公園を持つ点。品川・高輪エリアには高輪森の公園をはじめ、多くの自然が残されており、東京・芝公園エリアでも東京プリンスホテルが芝公園に囲まれた場所に立地している。

もうひとつは、江戸時代・明治時代から続く格式の高い場所であること。品川プリンスホテルは毛利侯爵邸(江戸時代は久留米藩の下屋敷)の跡地に立てられている、東京プリンスホテルに至っては徳川将軍家の霊廟跡に作られ、隣には徳川将軍家の墓所が残る増上寺がある。紀尾井町とは「徳川家とのゆかり」という点まで共通する。

プリンスホテル自体が、皇族や華族の所有していた広大な敷地を買い取った土地でホテル事業を展開しているため、似たような条件の場所が多い。逆にそうした「共通項」があることで、開発ノウハウの面のみならず、ブランドイメージの面でも相乗効果も狙える。東京ガーデンテラス紀尾井町が高いブランド力を発揮できれば、ほかの再開発地域でも「東京ガーデンテラス」ブランドを引き継ぐといった戦略も視野にいれることができる。

そもそも西武グループには「プリンスホテル」のように、日本最大のホテルチェーンという横の展開力を武器に、成長を続けた実績がある。「紀尾井町」は今後、西武グループがブランドを作り上げていくうえで、大きな試金石になりそうだ。
 

宇都宮 徹 東洋経済 記者

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うつのみや とおる / Toru Utsunomiya

週刊東洋経済編集長補佐。1974年生まれ。1996年専修大学経済学部卒業。『会社四季報未上場版』編集部、決算短信の担当を経て『週刊東洋経済』編集部に。連載の編集担当から大学、マクロ経済、年末年始合併号(大予測号)などの特集を担当。記者としても農薬・肥料、鉄道、工作機械、人材業界などを担当する。会社四季報プロ500副編集長、就職四季報プラスワン編集長、週刊東洋経済副編集長などを経て、2023年4月から現職。

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