なぜ中国は南シナ海に滑走路を造るのか 対潜水艦防衛力を強化

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 9月17日、南シナ海で3本目の滑走路を人工島に建設しているとみられる中国──。専門家はこうした動きについて、同国の対潜水艦防衛力が強化され、同海域での米海軍と同盟国の作戦を困難にさせるものだとみている。南沙諸島の美済礁で5月代表撮影(2015年 ロイター)

[香港 17日 ロイター] - 周辺国と領有権を争う南シナ海で、3本目の滑走路を人工島に建設しているとみられる中国──。専門家はこうした動きについて、同国の対潜水艦防衛力が強化され、同海域での米海軍と同盟国の作戦を困難にさせるものだとみている。

南沙諸島(英語名スプラトリー諸島)に建設中の人工島で中国が戦力展開する可能性に大きな注目が集まっているが、専門家は他国の潜水艦を追跡するのに滑走路が使用される恐れがあると指摘する。

中国本土から1400キロ以上離れた場所に滑走路3本を保有することで、中国のY9情報収集機やKa28対潜ヘリコプターが航続距離を拡大させることが可能になるという。

米国防総省が5月に発表した報告書は、中国沿岸部と深海における同国の対潜水艦戦闘能力は弱いと指摘していた。

中国本土の安全保障を専門とする嶺南大学(香港)の張泊匯氏は、対潜水艦防衛力の強化が、同国の核抑止戦略の中核をなす晋型原子力潜水艦の活動を守ることにも役立つとし、「中国の原子力潜水艦が有事に活動する際、多大な安全をもたらすことになるだろう」と語った。

中国の人工島建設については、来週にワシントンで開催される米中首脳会談で協議される重要課題となるだろう。

滑走路のトライアングル

衛星画像からは永暑礁(英語名ファイアリー・クロス礁)に長さ約3キロの滑走路が完成間近であることが確認できる。

米シンクタンクの戦略国際問題研究所(CSIS)が運営するサイト「アジア海洋透明性イニシアチブ(AMTI)」のディレクター、グレッグ・ポリング氏は14日、最近の画像で渚碧礁(同スービ礁)でも長さ3キロの滑走路が建設されているのが確認されたと語った。同氏はまた、先週に撮影された画像からは、さらに美済礁(同ミスチーフ礁)でも滑走路建設の準備が進められているようだと指摘した。

この3つの岩礁で建設されている人工島を合わせると、フィリピンや、ベトナム、マレーシア、ブルネイ、台湾の5カ国もそれぞれ領有権を主張する南沙諸島の中心にトライアングルのような形ができる。

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