インボイス事業者じゃないと損する職種はあるか いまさら聞けないインボイス制度の超基本(下)
郷:控除しとるんかい! じゃあ、出版社としてはあまり痛くないと。
小山:そう。だから「仕事を依頼するならインボイス事業者にしよう」みたいな思惑なり圧力が本格的に働きだすとすれば、2026年10月か、2029年10月からなんです。免税事業者に戻るフリーランスが増えている理由が少しご理解いただけたかと思います。
郷:「あ、やべ。フライングしちゃった」って気づいたんですね。
普通の領収書は認められなくなる?
小山:ただ、インボイス事業者にならないとクライアントから敬遠されそうな業種もあるんですね。具体的には飲食店や個人タクシー、プログラマー、デザイナー、動画編集者などです。
郷:え? 接待や移動って仕入れじゃないですよね?
小山:経費にかかる消費税も仕入税額控除の対象なんです。
郷:そうなんですか! でも、飲食店やタクシーが請求書なんていちいち出します?
小山:請求書だけではなく領収書やレシートなどでも十分なんです(※)。登録番号と税率・税額がちゃんと書かれていればインボイスとしてみなされます。最近は「インボイス対応領収書」「軽減税率対応領収書」みたいなものが売られていて、登録番号と税率・税額が書かれた領収書をもらえることが増えました。
※ほかに仕入明細書や納品書でもOK
で、いままでは経費とみなされる領収書であればどんなものでも消費税を控除できていたんです。それができなくなると、経理担当者や会社の上層部から現場に圧力がかかるのはありうる話ですよね。
「接待でこんな小さい店を使うな」とか、「免税事業者の可能性が高い個人タクシーはできるだけ使うな」とか。あるいは、積極的に経費を使って税金を抑えたいと思っている課税事業者のフリーランスも、「どうせ経費を使うならインボイス事業者のところで」と思うはずです。