オタクと消費の関係性を研究しているニッセイ基礎研究所の廣瀬涼氏によれば、「CDと握手券を結びつけたAKB48とその派生グループが圧倒的な成功を収めたことの影響が大きい」という。
「お金を払えば払うほど推しの時間を独占できる、というビジネスモデルを作り上げたことで、消費額が大きいほどほかのファンに対して優位に立てる、独占欲や承認欲求が満たせるというヒエラルキー(階層構造)が固定化してしまっている」(廣瀬氏)
課金が止まらなくなる「投げ銭」
こうしたファン同士のヒエラルキーをさらに加速させているのが「投げ銭」だ。投げ銭とはネット上で行われているライブ配信で、視聴者が配信者に対してお金を支払うこと。「スパチャ(スーパーチャット)」など配信プラットフォームによって呼び方はさまざまある。
東洋経済が取材を進める中で行き当たった最も深刻な事例では、50代の既婚男性が女子中学生に500万円以上も投げ銭をしていたというから驚きだ。
この男性は大手企業に勤めており、20代で結婚し、40代で部長に昇進するなど順調な社会生活を送っていた。ただ、50代に入って地方へ単身赴任となり、暇な時間に動画配信サイトを見ていたところ、配信者の女子中学生とやりとりするようになった。
やがて女子中学生に恋愛感情を抱くようになり、連日動画配信を長時間視聴、投げ銭の金額も膨らんでいき、500万円を超えた。単身赴任後に本社勤務となったが、この女子中学生への課金行為をやめることができず、結局離婚にまで至ってしまったという。
廣瀬氏は「オンライン決済が普及したことが背景にある」と指摘する。「PayPayで気軽に送金できるようになり、ネットでお金を送ることへの抵抗感が薄くなった。コロナ禍で現金決済がさらに減り、外出制限下で配信サービスが急伸したことで『投げ銭ビジネス』は一気に開花した」。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら