トランプ大統領就任で「円安が加速する」根拠 金融政策で円の価値を上げるのは無理筋

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日本にとって不運なことに、日本の金融情勢はアメリカの出来事によって風前の灯火となる可能性がある。FRBのスタンスによる円安は、日本の輸入インフレ率の上昇につながる。

これが、日本銀行が先日の利上げに失敗した主な理由だ。パウエルFRB議長が植田和男総裁よりも日銀の行動に影響力を持てるのは、このような場合だけだ。

日銀が描いていた「シナリオ」

円安は、日本が輸入するものに対してより多くの円を支払わなければならないことを意味する。そのため、食料品、エネルギー、衣料品、履物など輸入集約的な品目の価格が高騰する。

実際、2020年以降の日本の物価上昇の76%は、個人消費全体の37%しか占めていないにもかかわらず、この4品目によるものだ。結果、消費者の実質賃金は下がり、中小企業のエネルギーコストは上昇した。

日銀は、円安によるインフレ率の上昇やコロナ禍、ウクライナ戦争による世界的な商品価格の上昇が収まると考えていた。逆に、名目賃金の引き上げは、内需主導のインフレ率を2%まで上昇させる可能性がある。そしてその結果、全体のインフレ率は徐々に目標の2%へと向かうだろう。

しかし、過去半年のインフレ動向を見ると、食料品とエネルギー以外の商品のインフレ率は2%にとどまっている。一方、食料品、エネルギー、衣料品、履き物では5~6%のペースで物価が上昇している。

これらの数字に加え、"トランプ・インフレ"と円安が日銀の基本シナリオに自信を失わせつつある。そのため、少なくとも12月は、日銀はより多くの証拠が出てくるまで待っている。

日銀はジレンマに直面している。通常であれば、日本のインフレ率上昇が見込まれるならば利上げに踏み切るだろう。そうすれば金利差が縮小し、円安圧力に対抗できるだけでなく、予想されるインフレと戦うこともできる。

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