かつて習近平の下で語られた民主と台湾融合発展 台湾との統一へ中国が掲げる融合発展の源流

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以上でみてきたように、習近平が福建省党委員会に在職し専従副書記や省長を務めた1990年代後半から2000年代初めにかけて、福建省では、中国と台湾の《融合発展》に関するいくつかの構想が存在した。それらはみな、省党委員会と省政府の関連機関に所属する共産党の体制内知識人の提案であった。

中国でも民主主義の必要性を指摘する意見はあった

習近平指導部が台湾政策の現行方針を変えない限り、予見しうる近い将来、われわれが目撃するのは、前記のA案を基礎とする既存の「両岸融合発展」か、B案すなわち台湾有事の危機対応としての傀儡政権の成立のいずれかだろう。

ただし、C案のように、中台の平和的統一のカギとして、中国の自由民主主義の拡充の必要性を指摘した中国人専門家も確かに存在した。1999年1月に同人が発した先の言葉は、およそ20年後の2019年3月、台湾の蔡英文総統(当時)が呼びかけた下記のような台湾側の希望にまさしく呼応できるものだった。

中華民国台湾は民主国家であり、われわれの未来はわれわれ自身が決定する。……今年(2019年:筆者補註)は五四運動100周年であり、六四天安門事件30周年でもある。「民主主義」こそ、今年の両岸のキーワードである。わたくしは厳粛な気持ちで、北京当局に次のことを呼びかけたい。両岸の平和的発展のカギは、中国が民主化を実行できるかどうかにかかっている。両岸がともに民主主義体制を採用し実行したときにのみ、双方は対等な意思疎通・平和共存・対立解消、そして逆境から希望の光を見いだすことができる。

大陸の民主的変革に対する外部的契機としての台湾の存在感と重要性は、決して看過されない。この点でも日本と台湾は、互いの民主政治の発展のため、さらには大陸における民主化促進のため、いっそうの協力深化が求められている。

注:本稿は、2024年10月19日に法政大学で開かれた、日本現代中国学会第74回全国学術大会における筆者の研究報告のエッセンスをまとめたものである。
鈴木 隆 大東文化大学教授

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すずき たかし / Takashi Suzuki

慶應義塾大学大学院法学研究科博士課程退学、博士(法学)。財団法人日本国際問題研究所研究員、愛知県立大学講師・准教授などを経て、2023年4月より現職。主著に『中国共産党の支配と権力:党と新興の社会経済エリート』(慶應義塾大学出版会、2012年)。『習近平研究:支配体制と指導者の実像』(東京大学出版会、2025年1月近刊)。

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