連日、半導体に関するニュースを見ない日はないが、多くの人にとって理解するのが難しいのが先端半導体関連の対中輸出規制だろう。アメリカは中国の半導体技術の発展を警戒しており、中国に対する半導体関連の規制を相次いで強化。米中デカップリングの代表的な事例となっている。
輸出規制でも対中比率は上昇傾向
現在、アメリカ政府とその求めに応じた日本など各国政府が先端半導体やその製造に必要な装置、技術について中国への輸出を事実上禁じている。ただ、輸出規制を実施しているはずなのにオランダ・ASMLやアメリカ・AMAT社、日本・東京エレクトロンなどの売り上げに占める中国向けの比率は図1に示すように下がるどころか、むしろ上昇しているのである。
この上昇傾向に疑問を持つ方は多いだろう。要因は需要側と供給側の双方にある。需要側である中国内の半導体メーカーが将来のさらなる規制強化を想定して、装置を買いだめしようとしている。逆に供給側の半導体製造装置メーカーは台湾や韓国などの発注が減少している穴埋めをしてくれる顧客を求めている。
双方の思惑が一致した結果、対中売上比率は上昇した。もちろん現在中国向けに販売されている装置は輸出規制に基づいて許可を得た製品だけである。それでも中国が装置を爆買いして、装置メーカーの業績を下支えしたのは確かだ。だが、最近のASMLなどの受注残高発表を見ると中国バブルも終焉が近づいているようにみえる。
そもそも米中デカップリングが生じたのは、多くの識者がすでに解説してきたように5G向け携帯基地局市場において中国・ファーウェイ(華為)のシェアが高まったからだ。ファーウェイは否定しているがネットワークの中枢である基地局に、情報を奪取できるスパイ関連機能が埋め込まれるリスクをアメリカやその同盟国は懸念している。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら