「情報を手放して仮説を立てる」が現代で有効な訳 データを入手すると何かを得た気になるだけで終わる

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通常このサイクルでは、「計画」を起点にすることが多いのだが、どうも計画倒れになりやすい。計画から始めると、行動の熱量が上がらないことが多い。

どうすれば行動の熱量が高まるのだろうと試していたときに、「振り返り」を起点にすると行動の熱量が高まり、自分ごととして「計画」を立てやすくなると感じた。

この行動サイクルの「振り返り」に当たるものが、観察(思考)サイクルでは「仮説」だ。とにかく雑にでもいいから、仮説を立てる。そうすると、仮説を検証したいという欲望が生まれ、熱量のある観察が始まる。

仮説は最強の道具

仮説は、観察を始めるときの最強の道具になる。現代はたくさんの道具がある。その道具に振り回されると、人は観察ではなく「観測」を行ってしまう。観測をすると、データという手触りのあるものが手に入る。それで、何かを得た気になり、安心してしまう。インターネットをはじめとした道具など何もなくても、仮説だけを頼りに世の中を見ていた人たちのほうが、ずっと遠くまで観察できているように思う。

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たとえば、2500年ほど前の古代ギリシア。ギリシア人たちは、「火・空気・水・土」で世の中が構成されていると考え、その仮説にもとづいて、世界を観察し、思考を深めた。そして、観察を続ける中で、四元素という仮説自体もアップデートされていった。中国でも同じだ。五行は「木・火・土・金・水」の5つから世の中が構成されているという仮説だ。

西洋でも東洋でも、大胆な仮説があり、その仮説をもとに世界が観察された。さまざまな観察が起きたおかげで、仮説がアップデートされた。ニュートンの万有引力の法則も同じだ。

たくさんの情報と道具が現代社会にはあふれている。そういうものをすべて一度手放し、仮説だけを武器にする。それが観察力を磨く方法だ。

佐渡島 庸平 コルク代表取締役社長CEO/ 編集者

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さどしま ようへい / Youhei Sadoshima

1979年生まれ。中学時代を南アフリカ共和国で過ごし、灘高校に進学。東京大学文学部を卒業後、2002年に講談社に入社し、『週刊モーニング』編集部に所属。三田紀房『ドラゴン桜』を担当。小山宙哉『宇宙兄弟』のTVアニメ、映画実写化を実現する。伊坂幸太郎、平野啓一郎など小説も担当。2012年、講談社を退社し、クリエイターのエージェント会社・株式会社コルクを創業。インターネット時代のエンターテインメントのあり方を模索し続けている。

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