「情報を手放して仮説を立てる」が現代で有効な訳 データを入手すると何かを得た気になるだけで終わる

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はじめは、「なぜリンゴは地面に落ちるのだろう?」という子どもでも思いつきそうなとてもシンプルな問いが生まれる。そこから「地面がリンゴをひっぱっているのでは?」というラフな仮説になり、観察が始まる。さらに観察は新たな問いを生み出し、仮説がどんどん更新される。そして最終的には「万有引力の法則」という世紀の発見へとつながったのだと僕は想像する。

人類の偉大な発見の「はじめの一歩」は、本当にシンプルな問いだったのだと思う。いきなり偉大な問いを見つけて、人生をかけて取り組むのだと思うと、多くの人は自分の手元には、そんな問いがないと絶望することになる。そうではなく、誰にでも思いつくようなありふれた問いを、仮説と観察によって、研ぎ澄ましていくのだ。

「仮説→観察→問い」のサイクルを回す

僕は自著『ぼくらの仮説が世界をつくる』で、仮説から思考を始めることを主張した。2020年に、安斎勇樹さん・塩瀬隆之さんの『問いのデザイン』が刊行され、ベストセラーになった。タイトルの通り、どのようにすれば良い問いをデザインできるのかについて書かれた良書だ。「問い・仮説・観察」の3つがグルグル回っている。

どこを起点にすると思考が動き続けるか。そう考えたときに、安斎さんらは、「問い」だと思ったのだろう。本書では、「仮説」を起点とすると、サイクルが回り続けると仮定し、話を進める。正直、起点はどこであってもいい。このサイクルが回らなかったり、止まってしまったりしたときに、どうやって揺さぶりをかけ、動かすのか。その手段はたくさんあったほうがいい。

僕が、仮説からサイクルを始めるほうがいいと考えるようになったきっかけは、「行動サイクル」にヒントを得たからだ。とにかく仮説を立てる。すると「仮説」を検証したいという欲望を伴った「観察」のサイクルが始まる。

具体的に行動を起こすときには行動サイクルというものがある。行動サイクルとは、すべての行動は「計画」→「実行」→「振り返り」のプロセスを踏むことになるというものだ。

『観察力を高める 一流のクリエイターは世界をどう見ているのか』より
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