「海に眠るダイヤ」2018年を描く"最大の謎"の真相 現代編の設定が、なぜ「2024年」ではないのか
あんなに純粋で微笑ましいカップルだった鉄平と朝子(第6話終盤の2人のやりとりは名場面)の顛末には胸が痛む。
最終回直前、第8話の時点で、鉄平の行方はわからない。玲央が何者かもまだわからない。
玲央はいづみ(朝子)が持っていた鉄平のノートを読み、端島の歴史を知っていく。すると、端島のことが玲央のなかで身近なものとなっていく。
端島のことを何も知らなかった平成時代に生きる若者が、戦後、高度成長期の日本の地方に暮らす人たちの歴史や暮らしを知り、百合子や賢将の写真を見ると「俺ん中ではさ有名人だから嬉しいわ」と親しみを覚えるのだ。
そして玲央は変わっていく。
彼が勤務していたホストクラブが犯罪行為をしている(女性の売春をあっせんしている)ことを知ると警察に通報し、自らも犯罪に加担したと潔く自首するのだ。
何が彼を突き動かしたのか。
「笑いたいんだよ。本気で笑って生きたいんだ」と玲央は言う。ホストクラブでかりそめの空虚な笑顔でごまかす日々を終わらせて、「思いきり笑って誰かのために泣いたり幸せになってほしいと願ったり」したいと玲央は目覚めたのである。
誰かの幸福を願いながら笑いながら生きる日々を、玲央は「ダイヤモンド」にたとえる。売れないホストとして、お金を得るために他者をだますようなことをやってきた玲央が、荒んだ日々を自ら断ち切ろうとするのだ。
なぜ「2018年」に時代設定されたのか
この流れは、脚本の野木亜紀子、演出の塚原あゆ子、プロデューサーの新井順子がこれまで組んで作ってきたドラマ、例えば『MIU404』や映画『ラストマイル』などに通じるものがある。
野木たちはつねに現代の苛烈な労働環境にあえぐ若者たちに寄り添ってきた。『海に眠るダイヤモンド』もまた、社会に見捨てられそうになる労働者たちに光を当てている。
昭和の炭鉱労働者と、失われた30年を生きてきた平成の労働者たち、2つの時代の人々に。
これが令和ではなく、平成の終わり目前の2018年を舞台にしたことで、いっそう、切なさが募る。
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