防衛省は平成28年(2016)度予算概算要求において、シコルスキーのUH-60の派生型である海上自衛隊の哨戒ヘリSH-60Kを17機と、同じく空自の救難ヘリUH-60J改を8機一括調達すると発表した。調達予算は両機種合計25機で1032億円。量産によって調達費用を約154億円、約10%の縮減できるとしている。
空自のUH-60J改だけみれば、要求金額は8機354億円となっており、調達単価は44.25億円である。海自のSH-60Kと同率の削減であるならば、当初の調達予定単価は約49.17億円となる。
だが同機の導入初年度(平成23年度)の調達は3機で123億円、調達単価は41億円、その後もおおむね40億円程度で推移している(平成26年度は1機、49億円)。大量調達によって調達単価は下がってはいない。それどころか上昇しているのである。当初の調達予定単価23.75億円は一体何だったのだろうか。
不透明な商戦は以前からあった
問題は根深いため、古い話についても振り返っておく必要がある。1990年代末の空自の練習機商戦も不透明だった。この商戦では富士重工案がT-7として採用されたが、平成24年(2012)度の会計監査院は空自が導入した初等練習機T-7が、2003年度の導入からの17年間で約21億8300万円と見積もられていた整備費用が、実際には10年度までの8年間ですでに約18億2500万円と全体の約8割に達していたとして、改善を求めている。
この報告書をみるとIRAN費用だけは想定よりも安くなっているが、他の費用は軒並み当初の目論見よりも跳ね上がっている。特に富士重工の子会社に発注した整備委託費用が約2倍となっている(会計検査院法第30条の2の規定に基づく報告書:PDF)。
報告書は「整備作業は全体の約46%であって、過半の整備作業は見積りの対象とされていないものであった」と述べている。空自が意図的にIRAN以外の費用を見積もりの対象から外していたことが疑われる。つまり、これまたはじめに富士重案採用ありきの官製談合が疑われる。
このようなT-7をめぐる不透明、フェアとは言えない採用があり、その後の空自の救難ヘリ調達でも、採用されたUH-60J改良型の機体単価が当初予定から遥かに上回っている。空自の体質は変わらないと思われても仕方あるまい。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら