なぜエアバスは日本政府に激怒しているのか

不透明すぎる日本の防衛調達の問題点

さらにエアバスの子会社、エアバス・ヘリコプターズは9月15日、海上自衛隊の次期汎用ヘリへの入札も辞退すると発表した。

同社はアグスタ・ウエストランドなどと共同開発したNH90を提案すると見られていたが、「海上自衛隊向けの多用途ヘリコプター(艦載型)に関する入札機会が与えられたことを心より感謝いたします。しかしながら、当該選定においては、実際の性能以上に、国内における体制に重きを置かれており、われわれの提案が、要求される運航性能に最も適していると考えるにもかかわらず、選定される現実的な可能性がないと結論づけざるを得ませんでした」との声明を発表している。

つまり、お付き合いはしませんよ、ということだ。

出来レースの競争入札

筆者はこれらの商戦を取材してきたが、どう見てもはじめから米国製の機体を採用する意思が透けてみており、結論に合わせて選定が行われたように見える。現在の防衛省の調達は守屋次官のスキャンダル以後、透明性を確保するためとして随時契約から競争入札になっている。このためシングルテンダーでは具合が悪い。始めから採用が決まっていても、「公正な入札」を演出するために、「競合候補」が必要となる。

その「競合候補」がエアバスなどの欧州勢だった。エアバスは言うまでもなく欧州大陸最大の防衛航空宇宙メーカー。同社はFXで候補となったユーロファイターのコンソシアムのメンバーであり、空自の救難ヘリではエアバス・ヘリコプターズ(当時はユーロコプター)が川重と組んでスーパーピューマ、アグスタ・ウエストランドは海自がすでに採用していたMCH-101をベースとする機体を提案していた。UH-Xでは同じくエアバス・ヘリコプターズが川重と開発するX9を提案していた。

だが、いずれの商戦でも採用機種はあらかじめ決まっていたように思える。FXでは、調達コストや空戦性能、また日本に対する技術移転やプロジェクトへの参加がさほど評価されず、コストが極めて高く、実用化も遅れていた「米空軍が採用した」F-35Aが採用された。

しかも大々的に宣伝されていたコンポーネントの国内生産はほとんどなく、事実上国内生産は組み立て生産だ。さらに申せば調達コストはユーロファイターやもうひとつの候補であったスーパーホーネットの約2倍近い。予定される二個飛行隊の戦力はいつになるかわからないと、森本敏元防衛相や小野寺五典元防衛相は発言していたが、現在もそれは変わらない。

空自の救難ヘリでは当初の調達予定単価は23.75億円のはずが、採用された「UH-60J改」はおおむね調達コストが40億円で推移しており、空自はコストについての筆者の質問に対して「劇的なコスト削減方法はありません。頑張ります」と答えている。

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