なぜエアバスは日本政府に激怒しているのか 不透明すぎる日本の防衛調達の問題点

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UH-Xでは当初海外の製品も検討するとされたが、はじめから川重の生産していた偵察ヘリ「OH-1」の採用が決まっており、海外製品の検討は形だけであった。このため国内企業だけの競争となり、富士重工の提案する412型の改良案を破って川重案が採用されたが、周知のごとく官製談合が発覚したことで一旦白紙に戻された。

仕切り直されたUH-Xプログラムは当初防衛省も経産省も、内外市場で売れるような新たな民間機を開発し、それを陸自仕様にした機体を調達するとしていた。つまり民間市場で売れる機体を作らせ、日本のヘリメーカーに自立を促し、輸出を促進しようという意図があった。だが蓋を開けてみれば、共同開発とは名ばかりのマイナーチェンジ(ギアボックスの改良だけ)の412EPI改良型が採用された。

1400機 vs. 150機

エアバスと川重は、X9を今後20年間で1400機程は売れるとの数字を提示した。対してベルと富士重は、412EPIの改良型は約150機程度の販売を想定している。だが412の原形であるUH-1は原型機の初飛行は1950年代であり、基本設計が古く、将来性はない。その上412シリーズはインドネシアなどでも生産されており、同じ412シリーズ内での競合もある。

仮に素直に両者の数字を比べてもエアバスの方が約10倍であり、売り上げは当然大きい。また新規の開発であり、技術的にも得るものが大きい、当然ながらかなりの雇用も、税収も期待できただろうし、当然、日本の航空産業の発展に大いに貢献しただろう。さらに申せば、契約を取れなかった富士重がヘリメーカーから脱落するのでヘリメーカーが2社に集約されて、自衛隊需要にヘリメーカー3社が寄生している現在の不健全な体質の改善にもつながっただろう。

ところが、UH-Xのプロジェクトチームは途中から陸幕が納期の確実性や、開発期間の短縮など重視しだしたようだ。しかもエアバス・川重案は防衛省提示した、開発期間も配備次期もクリアできるとしていた。富士重案がそれを前倒しできることが大きく評価されたが、いかにも不自然だ。期間とコストをクリアしているのであれば、その点はさほど重視されるべきところではないだろう。

同じ土俵ならば既存機をマイナーチェンジが有利に決まっている。はじめから既存機の改良が有利とわかっていればエアバスヘリ側も既存機の改良型を提案したはずだ。しかも富士重は陸自の戦闘ヘリAH-64Dアパッチの調達が僅か13機で打ち切られたために、ヘリ部門の要員をすでに他の部署に移動させている。本当に事業を滞りなく行う体制が構築できるどうかも疑問がある。

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