こうしたことを考えると、日本企業が不振を続ける基本的原因は、企業外部の環境ではなく、企業のビジネスモデルそのものにあると考えざるを得ない。条件が大きく変化したにもかかわらず、古いビジネスモデルに固執することが間違いなのだ。
液晶テレビにおける垂直統合と水平分業
とりわけ、垂直統合と水平分業の選択が問題だ。これは、前回述べたスマイルカーブの議論と密接に関連している。以下では、それを薄型テレビの場合について見よう。
液晶テレビは、映像を映し出す液晶パネルに、モジュールと呼ばれる周辺部品を取り付けて作られる。
シャープやパナソニックは、パネルもモジュールも生産する「垂直統合型」だ。韓国のサムスン電子やLG電子もそうである。
これに対して、「水平分業型」がある。パネル製造は、最終製品を作らないEMS(電子機器の受託生産)企業が担当する。パネルを生産しないメーカーは、パネルを外部から調達してモジュールを取り付ける。
水平分業型企業の典型として、アメリカのビジオ(VIZIO)がある。同社は、05年に設立されたファブレス企業だ。北米の液晶テレビ市場でサムスン電子と首位争いを演じており、最近では、サムスンの市場シェア17・7%に対して、ビジオが19・9%となり、1位になった。台湾の瑞軒科技(Amtran Technology)が台湾や韓国から部品を調達し、中国の工場で組み立ててビジオに供給する。ビジオは販売に特化する(といっても、従業員数は10年で196人しかおらず、その大半はコールセンター要員と言われる)。パネルを生産するEMSとしては、台湾の友達光電(AUオプトロニクス)や奇美電子(チーメイ・イノラックス)などがある。