「外遊びの時間が減ると近視になりやすい」の事実 大事なのは、遺伝よりも子ども時代の環境

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為末:ある世代以上の人たちにとっては、自分たちは自由に外遊びができていたので、そもそも遊びの環境を整える必要があることが、直感的に理解されにくいんです。

窪田:たしかに「わざわざ環境を整える必要があるの?」と思う人は多そうです。でも、安全性の面から見ても、子どもを取り巻く環境は、ここ数十年で大きく変わっていますからね。

都市部か郊外か、住む環境で近視のなりやすさが変わる

為末:もう一つの、都市部と地方での認識の違いも大きくて、先ほどの学校の校庭が使えない問題も、ほとんどが都市部で起きています。一方、地方ではわざわざ学校の校庭を使わなくても、公園や広場がたくさんあるので「そこで遊べばいいんじゃない?」と。

窪田:遊び場がないのは、都市部の課題と受け止められてしまう。

為末:やはり温度差はありますね。地方に行くと「むしろ最近は公園に子どもがいなくて寂しいくらいだよ」と言われることも。地域によって、子どもたちが外遊びできる環境作りの重要度が変わってくる。活動を通して、それを実感しました。

窪田:外遊びに対する認識が、都市部と地方で違うというお話は面白いですね。実は、住んでいる地域によって近視のなりやすさにも違いが出るんです。

為末:そうなんですか?

窪田:例えば、シンガポールのようにビルが建ち並ぶ環境で育ち、ずっと室内で遊んでいたような子どもは、近視になる確率が高くなります。日本の都市部も同じような環境です。

それに対して、オーストラリアのような広々とした土地に暮らすと、外に出る時間が多くなり、自然と近視の有病率は下がっていきます。

為末:なるほど。それほど環境的な要因が大きいのですね。

窪田:はい。ですから、たとえ遺伝的には同じ要素を持っている家族だったとしても、住んでいる場所が違えば、近視のなりやすさも変わります。それを知ってもらえると、外遊びを推奨する重要性も分かってもらえるのではないかと。

次回はさらに深掘りして、子どもの外遊び時間が減ったことで、他にどんな問題が起こっているのかをお聞きしていきます。

(構成:安藤梢)

窪田 良 医師、医学博士、窪田製薬ホールディングスCEO

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くぼた りょう / Ryo Kubota

慶應義塾大学医学部卒業。慶應大医学部客員教授、米NASA HRP研究代表者、米シンクタンクNBR理事などを歴任。虎の門病院勤務を経て米ワシントン大学助教授。2002年創薬ベンチャー・アキュセラを創業。2016年窪田製薬ホールディングスを設立し、本社を日本に移転。アキュセラを完全子会社とし、東証マザーズに再上場。「エミクススタト塩酸塩」においてスターガルト病および糖尿病網膜症への適応を目指し、米FDAからの研究費を獲得し研究開発を進めているほか、在宅医療モニタリングデバイスや、ウェアラブル近視デバイスの研究開発を行っている。

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為末 大 元陸上選手

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ためすえ だい / Dai Tamesue

Deportare Partners代表。1978年広島県生まれ。スプリント種目の世界大会で日本人として初のメダル獲得者。男子400メートルハードルの日本記録保持者(2024年12月現在)。現在はスポーツ事業を行うほか、アスリートとしての学びをまとめた近著『熟達論:人はいつまでも学び、成長できる』を通じて、人間の熟達について探求する。その他、主な著作は『Winning Alone』『諦める力』など。

 

 

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