実はジリ貧「養命酒」が密かに抱えてきた"課題" 強すぎるブランド力ゆえ「味への誤解」があった
2階にレストラン、1階にベーカリー&カフェとショップを備えた複合施設で、「おいしい、たのしい、すこやか」な商品と体験を提供する店として始まった。注目すべきは、ショップには養命酒や関連商品を並べているものの、あえて養命酒製造という名前を表に出さなかったことだ。
複合施設「くらすわ」は、養命酒の既存イメージから完全に独立し、新しい価値提案を実現するための足がかり的存在だった。
さらに、出店には、より大きな意味合いがあった。それまでメーカーとして卸売中心のビジネスを展開してきた養命酒製造が、初めて本格的にB to Cビジネスに参入するきっかけとなったのだ。
この挑戦は、後に組織にも大きな変化をもたらすことになる。伝統的な製造業の文化を持つ養命酒製造にとって、小売業への参入は、顧客の生の声を聞き、ニーズを把握し、すばやく商品開発に反映させる。そんなビジネスモデルへの一歩だったのである。
それは時として困難を伴ったが、新しい企業文化を醸成する重要な契機となった。詳細は後編に記載したい。
地元では人気スポットに成長
くらすわに話を戻そう。同施設は開業から8年後の2018年、年間36万人が訪れる人気スポットへと成長した。これを受けて、同社の経営陣、社員からは、こんな声が上がったという。
「市場にただ商品や資金を投入しても、買ってくださる時代ではなくなった。お客様に直接商品やサービスを提供する、ダイレクト事業を並行して進めたほうがいいんじゃないか」「お客様に直接触れ、購買心理を知ることで勉強になるんじゃないか」
このとき、消費者と直接つながるくらすわを、第二の柱となるブランドとして育成する方針が定まった。
後編ー実は売上減少の「養命酒」が狙う"起死回生"の秘策 新規事業の名は「くらすわ」…って一体それなに?ーでは、養命酒という看板を外して赤字覚悟で始めた新規事業が、どのように組織を変えていったのか。老舗企業が抱える「安定感」と「イメージ」という重荷を、どう克服したのか。新旧の価値観の統合から生まれた、独自の成長戦略に迫る。
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