日テレ「読売テレビなど基幹4局」を統合する思惑 準キー局を含む再編は、救済策か攻めの一手か

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とはいえ持ち株会社傘下入りする4社は、今のところそれぞれの番組を継続して放送するほか、人事や総務、財務といった管理業務についても統合する計画はないという。

「まずは、地方局の重荷となっている中継局やマスター設備などを共用化して効率化を図ることから始める。その後、新しい技術や新規事業への投資などについて検討していく」(日本テレビ)としている。

今回のような統合の動きが民放各局に広がるかは不透明だ。キー局は、自社の番組を流してもらう代わりにネットワーク費用を支払うという実質的な“ミルク補給”を続けてきたが、収入の柱であるテレビ広告の減少はキー局、地方局問わずの話。他人の心配をする余裕はない。

2024年度こそ、いずれのキー局もスポット広告を中心に回復している。だが、「こうした追い風がいつまで続くのかは不透明。ネットの信頼性が失われるような事案によって、信頼できるテレビに広告が戻りつつあるようにも見えるが、ネットシフトの動きが止まるとも思えず、いつまでも地方局を支える体力はない」(キー局幹部)。

日本テレビの広告収入の推移

あえて基幹局に目をつけた意味

そうした中で日本テレビHDは、あえて複数の地域にまたがって放送する準キー局を含んだ基幹4局に目をつけたといえる。他の民放キー局幹部からは次のような声が聞かれる。

「経営状態の厳しい小さな局を救済する形ではなく、再編によって経営基盤を強化し、広告市場の変化や配信プラットフォームの台頭に対応しようという『攻めの体制整備』に打って出たようにも見える。具体的な統合効果はまだわからないが、キー局の中で一歩先んじた印象」

さらに冒頭の関係者によれば、今回読売新聞グループがFYCSに約15%出資し、第2位の株主となる点についても注目すべきだという。

「テレビ業界の再編に当たってのもう1つのポイントは、テレビと新聞とが徐々に一体となっていく流れ。日本テレビHDの場合、読売新聞グループ本社の山口寿一社長がすでに取締役会議長を務めており、こうした動きに出やすかった。逆にいえば、そうした流れに乗れない系列は淘汰の可能性がある」と明かす。

長年にわたって苦境を強いられている地方局。今回の件はその再編のモデルケースになるかもしれない。

田島 靖久 東洋経済 記者

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たじま やすひさ / Yasuhisa Tajima

週刊東洋経済副編集長。大学卒業後、放送局に入社。記者として事件取材を担当後、出版社に入社。経済誌で流通、商社、銀行、不動産などを担当する傍ら特集制作に携わる。2020年11月に東洋経済新報社に入社、週刊東洋経済副編集長、報道部長を経て23年4月から現職。

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