堤防決壊はあなたのすぐ近くでも起こりうる 治水は江戸時代から続く日本の宿命だ
日本中のほとんどの堤防は江戸時代に造られた。大型機械のない人力で造られた貧弱な堤防だ。明治以降、日本政府はその貧弱な堤防を江戸から引き継いだ。
明治、大正そして戦後の昭和にかけて、急激に発達した日本各地の都市を、毎年のように洪水が襲った。何百人、何千人の単位で、日本人の命は木の葉のように奪われていった。
河川工事やダムは本当に不要か?
国と地方行政は、限られた予算の中で、懸命に堤防を強化した。遊水池を造り、上流でダムを建設し、水害を防ぐ努力をしていったが、20世紀末になると、「河川工事は不必要だ」「ダムはムダだ」などという声が上がり、洪水に対する危険はもう去ったかのような風潮が広まっていった。
しかし、21世紀に入ると、自然の脅威は、気候変動による気象の狂暴化や巨大地震の津波の姿をとって、激しく日本を襲った。江戸時代に旧河道の上に築造された堤防を、近代日本は引き継いだ。低平地の沖積平野に展開した都市と住宅地は、その堤防によってどうにか守られている。
地球温暖化とともに、日本列島の気象はますます狂暴化していく。日本人はこの日本列島の中で、永遠に生きていかざるをえない。狂暴化する気象は軽々と行政の想定を超え、点と線の構造物だけでは安全が達成されないことが顕在化してきた。
未来の日本列島に生きる人々を守っていくには、土地利用の見直しという面的な対応策と適確な警報避難システムの構築が不可欠となっていく。日本にとって、治水は避けることのできない宿命だ。「堤防決壊」という大惨事が起こった今、改めてそのことを考え直したい。
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