コロナで大赤字「H.I.S.」牽引する成長事業の正体 あの「変なホテル」が利益を生む事業に成長
好調な業績の背景には、物価高騰に伴う人件費やリネン価格の上昇、円安の進行といった外部要因もある。しかし、より本質的な理由は大きく3つある。
第1に、コロナ以後に行われた、インバウンド需要を取り込む販売戦略への転換。第2に、H.I.S.グループとの強力なシナジー。そして第3に、開業当初から磨き上げてきた省人化と効率運営のビジネスモデルだ。1つずつ見ていこう。
その3つの強みとは?
①インバウンド需要を取り込む販売戦略への転換
まずは、販売戦略の転換である。アフターコロナに「変なホテル」は、需給のバランスで価格を変動させる「レベニューマネジメント」の強化に加え、販路の見直しを実施した。
以前は、じゃらんや楽天など国内OTAが販売の半分以上を占めていたが、現在は、海外OTAが過半数を占めるまでに。
その結果として、インバウンドの取り込みに成功。東京・大阪など都市圏のホテルでは、2023年から高いインバウンド比率を記録し、2024年度はさらに上昇を続けているという。
②H.I.S.グループとの強力なシナジー
続いては、130社を擁するグループならではの強みだ。物販の内製化による原価低減、旅行部門からの送客など、グループシナジーが収益性を高めているのだ。
そもそもの話、H.I.S.のような旅行業とホテル業にはシナジーが生まれやすい。社員には当然旅行好きが多く、そうなるとホテルも好きで、思い入れがあって異動を希望する人も多かったとのことだ。遠藤さんも、「ホテルを自分で建ててみたい」と出向を決めたのだとか。
またコロナ禍では、「旅行業にいきたかったけれど募集がなかった」とH.I.S.ホテルホールディングスにいったん入社したという人も……。「コロナ禍を経て、グループ他社とのつながりが強くなった」と遠藤さんは微笑む。
③開業当初から磨き上げてきた省人化と効率運営のビジネスモデル
オープン当初から、受付とチェックインをロボットに任せていた「変なホテル」。
元々、徹底した効率化と生産性の高さが強みだった。非対面・非接触が求められたコロナ禍は、このユニークなビジネスモデルがマッチし、さらに加速した。社員が担当できる業務の種類と量を増やす“マルチタスク化”が進んだのだ。
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