「生ドーナツの行列」を嘲笑う人が知らない"真実" むしろ行列は「そこに滞在できる権利」に
一方で、Z世代は「コスパ・タイパを重視する世代」とよく言われている。今の若い人は、かけたコスト、タイムに対するパフォーマンスを最大化したいという価値観を持っている。というよりも、Z世代に限らず、その上の世代でもこうしたコスパ、タイパ重視の傾向は浸透しつつある。
この「行列に並ぶ」という行為は、目的のために超時間、行列で過ごさなければならない。時間を大事にする現代人が何時間も行列に費やすのは、コスパ・タイパの悪い行為ではないだろうか? という疑問を感じていた。
しかし、当事者に取材をしていくと、異なる背景が浮かびあがってきた。
行列に並ぶことは優れた「体験消費」だった!
コスパ・タイパを重視するはずの現代人が行列に並ぶという、一見すると矛盾する行為をする理由は大きく2つあると考える。
まず1つ目は容易に思いつく理由ではあるが、「行列に並ぶ」というその体験自体に価値を見出しているということだろう。
単にハンバーグの写真をSNSにアップするのではなく、「1時間並んだ末に食べたハンバーグ」をアップする方が見る人の興味を引くし、ただの生ドーナツよりも「1時間並んで購入した生ドーナツ」の方が、プレゼントされると嬉しい。単なるモノ消費ではなくコト消費としての価値を行列に見出しているのだ。
筆者が最近並んだ行列の中でもっとも印象深かったのが、栃木県小山市にあるラーメン店「ヨコクラストアハウス」。同店は昆布水つけ麺がウリで、数々のラーメンメディアに取り上げられ、ラーメン評論家やインフルエンサーからの評価も高い名店だ。
最寄り駅は小山駅だが、店まではそこから約4.8km。歩いていくのは大変な距離なのでバス(1時間に1本ほど)やタクシーで向かう人が多く、地元の人以外はおいそれと行ける立地ではない。にもかかわらず全国のラーメンファンが詰めかけ、1~2時間は行列に並ぶ超人気店となっている。
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