空虚な「大阪都構想」、展望なき危ない賭け
大阪府と市の広域行政一元化を目指す統合本部新設、市役所の人件費削減方針、地方自治法改正に向けた閣僚や中央政界幹部らとの面会──。
地域政党「大阪維新の会」を率いて、大阪市長・府知事ダブル選を制した橋下徹大阪市長は12月の就任早々から市政改革を本格化している。看板公約である「大阪都構想」の実現に向けた動きが、選挙の勝利という「民意」を得て一気に加速、と誰の目にも映る。ところが、そもそも大阪再生のためと唱えた「都構想」とはいったい何なのか。大阪の住民は、多くを知らされていない。
大阪都構想とは、政令指定都市である大阪市・堺市を廃止して、大阪府と統合した大阪都にするというもの。府と市の二重行政をなくし、都市開発など広域行政を都に一本化することが特徴だ。大阪都に権限や財産を集権化する一方、基礎的な行政を特別自治区に移し分権化する。そのため、現在24の行政区がある大阪市を8~9の区にくくりを見直したうえで、区長と区会議員を選挙で選ぶ特別自治区にする方針だ。行政が従来の大阪市よりも身近になればよいことのようにも見える。
ただ、疑問を呈する声は少なくない。行政学・地方自治論が専門の村上弘・立命館大学教授は「政令指定都市から重要な権限や税収などの財源、施設や土地などの資産を大阪都が取り上げるのが都構想だ。特別自治区は、基礎的権限や財源のみで、以前の市に比べれば格下になる。大阪市の人たちは自分たちの市や財産がなくなることを本当に理解しているのだろうか」と首をひねる。