空虚な「大阪都構想」、展望なき危ない賭け
財政調整制度には、さらに問題点がある。調整交付金に地方交付税や臨時財政対策債を組み込んでいることだ。国から自治体への財政補填である地方交付税は、国が基準を定めて自治体に配分する。地方財政論が専門の森裕之・立命館大学教授は「このモデルの場合、国の基準で配分された地方交付税がもう一度、大阪都の基準で調整交付金として特別自治区に配分される。基準が国と都で二重になる」と解説する。
調整交付金は都と区で分ける前提。大阪市であれば総取りをしていた財源を、大阪都では特別自治区が一部上納しなければならない。都の基準が国の基準を下回る可能性大で、特別自治区は国の最低限の財源保障も受けられないことになる。
また臨時財政対策債は、地方交付税の財源不足を補うため、交付税を渡す代わりに、借金の起債枠を自治体に与える制度だ。将来の地方交付税で償還財源を保証するものの、借金であることには変わりない。あくまでも起債の発行意思は自治体にある。これを調整財源に組み込むのは「大阪都が特別自治区全体の借金を決めて、調整金に組み入れることになる。借金が自分の意思どおりにならない独立した自治体があるだろうか」と森教授は批判する。
お手本の東京都は、大企業の本社が集中し、日本でも突出して税収が潤沢なため、地方交付税を受けていない。したがって、こうした問題は発生しない。これに対して大阪市は毎年、臨時財政対策債を含めれば500億円、大阪府は3000億円規模を地方交付税に頼る。あるメディアは、大阪都構想を「東京都と匹敵する大阪を作る」と報じたが、同じ「都」の名前になっても財源の大きな格差を埋め合わせることはできない。