ブランド物を欲しがる人と推し活する人の共通点 囚われの身になってしまう、偶像崇拝者たち
哲学というと難解な専門書を読み解く必要がありそうで、つい身構えてしまう人もいるでしょう。しかし、ベルリン自由大学で哲学を学んだ作家の白取春彦さんは、哲学の個々のユニークな考え方を知ることによって、自分の考え方や価値観にこれまで気づかなかった新しい視点と発見を与えてくれる、といいます。
白取さんの新刊『ひと口かじっただけでも 哲学は人生のクスリになる』から、現代においてこそ役立つ哲学の考え方を一部引用・再編集してご紹介します。
マルクスが生きていた頃のお買い物
商品が売れるように「差別化する」、という。差別することによって、差別する側のほうに高い価値が生まれる。商品がそういうふうに変質したかのように見えるマジックを、昔からよく知って使っているのが商人だ。
たとえば、和菓子や果物などを皇室に献上することによって、皇室献上品として価値と質がいっそう高いものであるかのように宣伝することができる。
さらに、商人たちは差別化で商品をきわだたせて売る方法よりもいっそう強い方法を見出した。それは偶像(ぐうぞう)をつくりあげて商売にすることだ。ただし、偶像そのものを売るのではない。偶像にまつわるものを売ることだ。
『資本論』(1867~)を書いたマルクスが生きていた19世紀半ばと、それから120年後の商品の消費の仕方はがらりと異なるようになった。
まずマルクスは、商品の価値は二つあるとした。「使用価値」と「交換価値」だ。
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