国際社会に背を向けた北朝鮮の終わりは近い 金正恩が自国を荒野へと導いている

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同国の経済は混乱を極め、農業の基盤に現代の工学やテクノロジーがまったく取り入れられていないことから、より気候変動の影響を受けやすくなっている。市場経済を容認する当局の決断は、必要性に迫られて下されたものだ。あらゆる国々で退廃していった共産主義体制と同様、北朝鮮政府は集団農場の収穫物の対価を支払う体制を構築できていない。

中国は、実質上、この小さな隣国と手を切っている。ロシアは新しい同盟国を得る機会をうかがいながらも、弱体化している自国経済の管理に必死であり、タダで何かを得ようとする国との友好関係の修復には、興味を示していない。

金正恩の指導者としての特徴の一つは、北朝鮮における核兵器開発計画の中止を求める交渉に無関心だったことだ。実際、最近の中国がいわゆる六カ国協議を再開させようと必死になっていた一方で、北朝鮮は物静かに「結構です」と拒否していた。

金正恩指導下の北朝鮮は、核兵器を搭載できる弾道ミサイルの開発に注力し、多額のカネを投じてきた。以前のパートナー――実際のところ全世界がそうであった――は、制裁を厳しくして警戒を強めるしかなくなり、米国とその同盟国は、北朝鮮の攻撃システムの正体が明らかになる前にそれを無力化できる可能性のあるハイテク防衛システムを開発している。

いずれは韓国が吸収

4年間にわたり行われた六カ国協議の間、北朝鮮の交渉相手である米国、韓国、中国、ロシア、日本は大盤振る舞いともいえる取引を提案した。核開発計画の中止と引き換えに、広範囲の支援や保証をもたらすものだった。良好な状態で国際社会の一員として認められる利益に背を向けてしまった金正恩は、明らかに自国をさらなる荒野へと導こうとしている。

このようなことからも、専門家の多くが北朝鮮消滅後の政治体制に意識を向け始めた理由は容易に理解できる。どのような成り行きでそうなるかは定かではないが、いずれ北朝鮮は機能できなくなり、韓国が引き継ぐことになる。

韓国国民の多くは、北朝鮮の人口を吸収する責任を負う準備が出来ているのか自信を持てないでいる。このような歴史的難題に直面した朝鮮半島の人々は、子孫たちへの期待と先祖たちの願いを胸に秘めつつ、再統合を認め、最終的には喜んで受け入れることになるだろう。

この任務は歴史的に意義が大きいものである。比較的最近の事例となるドイツの再統合は、いくらか手本にはなるが、朝鮮半島は独自の道を切り開かなければならない。その過程では、堅実な計画だけでなく、友好関係や同盟国、パートナーも必要となろう。

 週刊東洋経済9月12日号

クリストファー・ヒル 米デンバー大学コーベル国際大学院長

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Christopher R. Hill

米国の元東アジア担当国務次官補。近著に『Outpost』。

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