ネスレ日本はあえてコンビニを重視しない 高岡社長はセブンからの打診も断った

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「本物のブランドなら、お客さんは探してでも買いに来る」と自信を見せた高岡社長(撮影:尾形文繁)
スイスを発祥とする、世界最大の食品企業であるネスレ。「キットカット」や「ミロ」、「ネスカフェ」などの有力ブランドを武器に197カ国で事業を展開し、2014年度のグループの売上高は916億スイスフラン(直近のレートで11.2兆円)、営業利益率は約15%と高収益を誇る。
傘下の日本法人の業績は公表されていないものの、営業利益率はグローバルの15%を上回り、2015年上半期は2ケタ増益を果たしたという。日本の食品業界は特売が常態化し、新商品のライフサイクルも短いため、収益性の低さが目立つ。そうした中、どのように高い利益水準を維持しているのか。ネスレ日本の高岡浩三社長兼CEOに聞いた。

 

――ライバルとは違った独自の販売戦略が目立つ。失敗することはないのか。

すべて最初はうまくいっていない。コーヒーマシン「ネスカフェバリスタ」も発売から1年半はまったく売れなかった。そこで1万5000円で売っていたものを、(試験的に)4980円、7980円、9980円の3段階に値下げした。すると4980円と7980円で売った店では販売量が10倍にハネ上がった。

ただ、4980円で買ったお客さんは「安すぎてちょっと心配」と言う。つまり、お客さんの値頃感が7980円にあった。この値段だと儲けはゼロだが、赤字ではない。コーヒーマシンさえ買ってもらえば、ネスカフェから”浮気”されずに済む。(コーヒーパックを扱っていない)電機メーカーはこんなに安く機械を販売できないから、競争が激化せず、値崩れもしない。いろいろやって何回か失敗しているうちに、うまくいく方法が見つかる。

「今後もPBをやるつもりはない」

――小売りのプライベート・ブランド(PB)に参入しない方針を採っている。なぜか?

 儲からないから。高利益に徹するということは、強いブランドを持つということ。それも絶対的なブランドであって初めて利益はついてくる。

セブン-イレブンがカウンターコーヒーを出す時、最初に(セブン-イレブン・ジャパン社長の)井坂(隆一)さんから僕に電話がかかってきた。世界で一番いい豆を、一番安いコストで提供できるのは、ウチだから。でも「ネスカフェ」ブランドで売るならいいけど、セブン-イレブンのブランドでしょ、と。お互い自社ブランドで展開したかったからお断りした。

結局、他のメーカーさんはブランド力がないからPBをやらなきゃ仕方がない。一番大きい小売りさんでも、うちのやり方に沿わなければお断りする。本物のブランドなら、お客さんは探してでも買いに来る。今後もPBをやるつもりはない。そうでないと高い利益率を維持できない。

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