暴力・歴史・苦痛をひもとくノーベル賞作家の視点 ハン・ガン、個人の記憶・苦痛を探究し文壇揺るがす

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英語圏で絶賛された『菜食主義者』以降、『少年が来る』や『別れを告げない』などの作品がフランス、イタリアなどで高評価を受け、ノーベル文学賞へと導く決定的な役割を果たしたというのが、出版界関係者たちの説明だ。

ハン・ガンは、ノーベル文学賞受賞直後に記者会見を拒否した。一方で、2023年にはこの作品でフランスのメディチ賞を受けた際の記者懇談会では、ハン・ガンは「作品を書きながらとても寒かった。これからは冬から春へと向かいたい」という冗談を言う一幕もあった。

「これからは生命について書く」

ハン・ガンは「これからは生命についての話を書いてみようと思う」とも発言し、「もちろん書けるように書くが」とのヒントを残した。個人の苦痛における生命と治癒の物語。50代半ばならば、まだ作家としては全盛期でもある。ノーベル文学賞はハン・ガンの描き出す文学世界の「完成」ではなく「過程」のうちの1つだ。

文学評論家であり、韓国・西江大学国語国文学科のウ・チャンジェ教授は「ハン・ガンは霊媒として、生きている者と死んだ者、人間と動物、人間と植物の間で、途絶えてしまった魂の道を繋ぐ感受性を見せてくれる作家だ」と評価する。

そして「韓国の現代史を力強い視点で眺望した先輩作家たちの作品を土台に、ハン・ガンは同じ歴史を扱いながらも人間の内面の苦痛とトラウマをさらに深く紐解き、それを神話的な想像力で再現した独特な美学で繰り広げることができたようだ」と述べた。

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