わずか1週間で閉店「りゅう社長」"撤退劇"の真相 「話題作り?」との声もあったが実際は全然違った

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インバウンドを意識して価格も高めの1000円に設定していた。全くお客さんが来ず、焦ったりゅう社長は呼び込みを開始した。しかし、浅草で呼び込みを行うことはタブーだった。外国人観光客が嫌がってしまい、むしろ逆効果になってしまうからである。

ここから得意のSNSなどデジタルでの集客を行ったが、周りの住民を無視した展開に集客が上向くことはなかった。

「完全に商売をナメていました。『鈴の木』が上手くいっていたこともあって舞い上がっていたんだと思います。オープン前には必ずやるポスティングもしていませんでしたし、商売の基本を全く忘れていました。

このままでは集客に1年以上かかってしまい、35歳までのりゅう社長3年計画が崩れてしまうと思い、オープンから2日で閉店を決意しました」(りゅう社長)

ここでりゅう社長は銀座の喫茶店で「ラーメン凪」の店主・生田悟志さんに会う。生田さんはりゅう社長が何かと相談に乗ってもらっている数少ない先輩だった。生田さんはりゅう社長の表情から何かを感じ取ったのか、心配してくれた。

「生田さんは観光地で出店すること自体の難しさを教えてくれました。オープンして2日目からすでに撤退を考えており、実は鎌倉の物件も借りていることを話し、2人で大笑いしました。生田さんは破天荒すぎる僕の行動に大笑いし、自分でもあまりの大失敗に笑いが出ました。これが悔しさや自分への呆れを通り越した瞬間でした。

生田さんから『大失敗した人しか大成功はできない』という言葉をいただき、これで心がスッキリしたんです。第一線で活躍している生田さんの話に心打たれ、正式に閉店を決めました」(りゅう社長)

雇っていたアルバイトのスタッフ12名にも閉店の説明をし、同条件で池袋の「鈴の木」に異動できるように対応した。こうして8月31日、「とびっこ東京 浅草店」は開店からわずか1週間で閉店した。

「話題作りだったのではないか」「間借りの店だったのではないか」など臆測が飛び交っているが、これが浅草店の閉店の真相である。

値段も1000円→680円に大きく下げた

そして閉店翌日の9月1日から鎌倉店の内装工事に入る。浅草店の失敗を考えると鎌倉で上手くいくはずはないと思うところだが、もうりゅう社長は引くには引けなかった。

「とびっこ東京 鎌倉店」。今度は「安くて早くて旨い」を胸に、地域の住民にも使ってもらえる店を目指した(筆者撮影)

浅草店オープンの頃から考えていた「ラーメンの食べ歩きを文化にしたい」という思いと、失敗で得た教訓から地元の人にも好まれる店にしようという決意のもと、オープン準備を進めていった。「安くて早くて旨い」という駄菓子屋感覚で寄れる店を目指してお店作りを始めた。価格は680円とこの近辺では類を見ない安さに設定した。

「近年ラーメン1杯『1000円の壁』という話が持ち上がり、1000円を超えるのがカッコよくて当たり前という風潮があると思います。今後1~2年すれば多くの店が1000円を超える価格設定になっていくと思います。ここに逆張りで680円のお店が来るのは面白いだろうと考えました。

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