そうやって幸い、お仕事はいただけるようになった中、新型コロナ禍でお客さんに来てもらえなくなりました。さらに1本の映画に大きな衝撃を受けることになりました。
アンソニー・ホプキンスさんがアカデミー主演男優賞を受賞した『ファーザー』(2021年)という作品を見るんです。
アンソニー・ホプキンスさんが認知症の男性を演じてらっしゃいました。人は必ず衰える。今の状況ではなくなる日が確実に訪れる。そして、当たり前は当たり前じゃない。そんなことをコロナ禍と映画をきっかけに考えるようになりました。
人として死ぬのもそうやけど、芸人が死ぬ時ってどうなる時なんやろう。仕事がまったくなくなったとしても「芸人としては終わりです」とは告知されない。でも、実質的には死んだのと同じになっている。そこで、自分自身が「結局、芸人として何にも挑んでなかったな」と思うのはイヤやな。そう思ったんです。
どうなるかわからんけど、何事も当たり前ではないし、さらに挑戦をしておく。そこをすごく思ったんですよね。そこから、大阪・フェスティバルホールで「兵動大樹のおしゃべり大好き。」の公演をやらせてもらいましたし、「無理かもしれんけど、頑張ったらできるんじゃないか」ということに挑むようになりました。
笑いの職人を目指して
以前、松本(人志)さんから「すべらない話」の時に「兵動は職人やな」と言ってもらったことがあったんです。
僕、昔から職人さんをすごくリスペクトしていて、一つのものを突き詰める姿勢。周りが「よい」と言っても、自分が納得いかなかったら「よくない」と言う姿勢。そんなところにあこがれを持っていたんです。そして、そういう積み重ねが何かしらの深みにつながっている。それもすごいことだなと。
自分で言うのはおこがましい話ですけど、一応、いろいろ考えながらしゃべっている。しゃべり続けている。これは積んでいることにはなるんだろうなと思います。
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